ラグビー日本代表、快進撃の舞台裏──ベスト8進出を支えた「脱・根性論」戦略

史上初ベスト8進出を果たしたラグビー日本代表(Gettyimages)

スポーツにおいて、データが少しずつ幅を利かせるようになっている──。

2019年秋に日本中を魅了したラグビーワールドカップ、日本代表チームの素晴らしい戦いの背後にも、試合準備でのデータ活用があった。世界中を感動させたあの戦いを支えたデータアナリストが舞台裏を明かした。

「全ては選手のため、選手のパフォーマンスのため」──日本代表のアナリストとしてW杯での熱い戦いを支えた公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の浜野俊平氏の言葉だ。浜野氏は、日本スポーツアナリスト協会(JSAA)が2月に都内で開催された「スポーツアナリティクスジャパン2020(SAJ 2020)」で、背後にあったデータ活用について語った。

浮き彫りになったのは、徹底した客観性と効率へのこだわりだ。「One Team(ワンチーム)」が流行語になった日本代表は、根性論がいまだ根強いとされる日本のスポーツ界に、別の新しい流れも起こしていた。


公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の浜野俊平氏

日本チームは未知数のラグビーを経験していた


浜野氏はラグビーのアナリストの仕事を、「試合準備の一歩前の段階の準備をすること」と語る。つまり、試合のプランを組むコーチ、試合に向けて練習をする選手、とそれぞれが試合の準備に入る前に情報を揃えることだ。

そこには、自分たちのチーム、相手チーム、さらには審判の分析も含まれる。

浜野氏はトレーニング(練習)と試合の2つでのライブデータを用いた取り組みを語った。ここではトレーニングを中心に、浜野氏の話を紹介する。トレーニングでのアナリストの役割は「一度のトレーニングで最大効力を発揮させること」と浜野氏。

例えば、あのスコットランド戦、アイルランド戦に向けたトレーニングを振り返ると──。浜野氏が事前に相手を分析したところ、2つの数字が際立ってみえた。ボールが動いている”実稼働時間”の「ボール・イン・プレイ」、それに地面でボールを奪い合う「ラック」だ。

アイルランドがボール・イン・プレイが41分、スコットランドが40分であるのに対して、日本は34分。ラックは、アイルランドが125回、スコットランドが110回であるのに対し、日本は80回。ここから言えることは、日本は2カ国と比べて7分ほどボールが動いている時間に差があり、ラックの回数も遥かに少ない──「日本チームには未知数のラグビーを、彼らは経験していた」(浜野氏)。


事前の分析から、アイルランド(緑)とスコットランド(紺)のボールインプレイとラックの数は、日本(赤)を上回っていることに着目した。
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文・写真=末岡洋子

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