ビジネス

2019.12.24

ネット販売を開始した「こんまり」 その戦略にときめかないわけ

JC Olivera/WireImage


近藤のブランドの精神は、高級志向でエリートの裕福な顧客だけに向けられたものではない。彼女のオーディエンスは多様で広範囲にわたる。それこそ、今回の問題点だ。近藤は自身のファンの1%に合わせることで、本当に大切な99%を無視してしまったのだ。

事業主ならほぼ全員が知っていることだが、力強く一歩を踏み出すこともあれば一歩後退することもある。近藤のネットショップの場合、これは確実に後者だ。しかし、今からでも遅くはない。

近藤を「裏切り」のために責めることももちろんできるし、96ドル(約1万1000円)のお玉を販売していることでさらに批判を強めることもできる。しかし、この偽善的な状況を嫌う人がいる一方、私の批判は単に彼女の戦術の貧弱さによるものだ。ここでは、ライフスタイルブランドを成長させる上で私から近藤に送りたいアドバイスをいくつか紹介する。

まずは希望を捨てないこと。ブランドと今後の復活の道を築く機会はまだ存在する。

近藤は人々にガラクタを減らして喜びを見つけることを説くことでブランドを築き上げた。そして、ファンはこうした教えを実践した。今までのように、人々の啓発を続けよう。ネットフリックスや出版物以外にも他の消費メディアに活動範囲を広げ、実用的でインスピレーションにあふれたコンテンツを作り続ける機会はある。

コンテンツといえば、近藤のアプリはどうなったのだろう? アプリストアから消えてしまったようだが、これがとても役に立つ可能性がある。瞑想(めいそう)の指導や実践的な指導を提供する「‎テン・パーセント・ハピアー(10% Happier)」のような購読型の心の健康・ウェルネスアプリは成功を収めている。同アプリは、資金調達シリーズのシード2で約370万ドル(約4億円)を調達した。これは近藤が27ドル(約3000円)のアロマセラピーミストを販売して得る額よりも高いはずだ。

近藤が愛されているのは確かなので、ソートリーダーシップの分野で存在感の構築を続け、講演の機会を増やすこと。また、ポッドキャストを作ることさえできる。近藤を見たり、近藤と面会したり、その話を聞いたりしたい人は既に存在するため、近藤のブランドを構築する上では自然な移行だ。

商品販売の道を選ぶ場合は、特にターゲットやメーシーズなど手頃な価格の小売企業との協業に焦点を当てること。グープのことは忘れ、複数の価格帯に合わせることができて近藤の広いオーディエンスの興味を引くような、美しくも実用的な商品を作ることを考えよう。

私は近藤がその帝国を成長させることを心から支持している。ただ、その中でブランドの精神と矛盾する行動を続けてはだめだ。オーディエンスの心を一度つかんでいる近藤なら、もう一度それができると私は確信している。

翻訳・編集=出田静

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