米中合意で「置き去り」にされたファーウェイの今後

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米中貿易摩擦が激化する中、米政府はファーウェイをブラックリストに加え、交渉材料に使うことが予想されてきた。米商務省が5月にファーウェイを「エンティティ・リスト」に加えて以降、同社はサプライチェーンの規制を回避することに努めてきた。

米中通商協議が第1段階の合意に達したことで、同社は恩恵を受けることになるのだろうか? 結論から言うと、答えはノーだ。同社を取り巻く環境は、それほど単純ではない。

米中両国政府は12月13日、貿易交渉で合意に達した。これにより、少なくとも短期的には両国間の貿易摩擦が和らぎそうだ。トランプ陣営は今回の合意を「素晴らしいもので、歴史的だ」と称賛した。一方で中国政府は、異例の記者会見を行い、合意が中国政府にとって勝利であることを強調した。米通商代表部は、予定していた新たな関税の発動を見送ると発表した。

今回の合意は、ファーウェイの事業には直接的な影響を及ぼさない。それは、エンティティ・リスト入りの理由が、米国にとって安全保障上の脅威であるからだ。米政府は、ファーウェイが中国政府からの要請を受け、諜報活動を行うことを懸念している。同社はこうした懸念を否定しているが、米政府はファーウェイを中国企業制裁の主要ターゲットとしている。

しかし、この数週間でファーウェイに対する規制は少し緩和されている。同社は先日、FCC(米連邦通信委員会)が通信業者への補助金プログラムから同社を排除したことを受け、米政府を提訴したが、実際の影響は軽微だ。同社がより重視しているのは、2020年の新製品ローンチに先立ってスマホ事業に対する規制を緩和することであり、また5Gから同社を排除するよう国際社会に呼び掛けることを米政府に止めさせることだ。

米商務省は最近、米企業がファーウェイにソフトウェアを輸出することを承認し始めた。マイクロソフトが既にライセンスを取得しており、グーグルの対応に注目が集まっている。

ファーウェイの新型スマホにグーグルのソフトウェアが搭載されなくなったことは、ブラックリスト入りの象徴的な出来事だった。2020年にリリース予定の「P40 Pro」にグーグルのアプリが復活する可能性が指摘されており、来年2月に開幕するモバイルワールドコングレスで発表があるかもしれない。

ドイツやスペインでは5G契約を獲得

第1段階の貿易合意がファーウェイに与える影響はないものの、規制は徐々に緩和されているのが実情だ。同社は、海外の消費者がスマホにグーグルアプリが搭載されていることを期待していることを受け、次期スマホにはAndroidを搭載すると発表している。

今後数週間の動向によって、ファーウェイが2020年にリリースする次期スマホにAndroidを搭載できるか否かが決定するだろう。同社は、第1段階の貿易合意の恩恵を受けることができず失望しているかもしれないが、さらなる規制緩和のきっかけになるかもしれない。

一方で、米政府内にはファーウェイに対する制裁を解除することに否定的な意見が根強い。米政府は、同社がドイツやスペインで5G契約を獲得したことを批判しており、逆にノルウェー政府が同社を排除したことを歓迎している。

今後、欧州では米政府によるファーウェイ排除の呼びかけに従う国と、そうでない国に2分される動きが加速するだろう。ファーウェイに今回の合意とその影響についてコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

編集=上田裕資

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