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2019.09.19 18:30

女性投資家のランチから生まれた子育て支援ファンド

黄春梅(写真左)、土岐泰之(中央)、高塚清佳(右)

世界的な市場規模が約50兆円にまで急成長している「インパクト投資」。邦銀初のインパクト投資ファンドは、2人の女性によるお昼休みの打ち合わせから生まれた。


保育士の仕事はハードだ。園児が動き回る時間はもちろん、うつぶせ寝による突然死を防ぐため、お昼寝の時間も絶えず目を光らせておかなくてはいけない。過重労働やそれに見合わぬ待遇で、厚生労働省の調査(2015年)によると離職率は10.3%に及ぶ。

この社会課題をITで解決しようとしているのがユニファだ。午睡については、園児の肌着やパジャマに取り付けた小型センサーで体の向きをチェックして、自動で記録。園児を見守ると同時に、保育士の負担を軽減させる「ルクミー午睡チェック」を提供。他にも保護者向けインターネット写真サービスや検温時間を短縮するサービスなど、保育の現場を効率化するサービスを次々にリリース。すでに全国でのべ5000施設が同社のサービスを導入するまでに成長し、保育士の確保や保育の質向上に貢献している。

「保育業界には解決すべき課題がたくさんあります。ただ、保育園事業そのものは補助金が支える世界で、投資家が直接支援する余地が少ない。保育業務のIoT化にチャンスがあると考えて投資を決めました」

こう語るのは、1児の母であり、新生企業投資のインパクト投資チームシニアディレクターの黄春梅だ。黄は、同じく1児の母であるシニアディレクターの高塚清佳と2人で、邦銀初のインパクト投資ファンドを組成した。インパクト投資とは、経済的リターンの追求と社会的課題の解決の両立を目指す投資のこと。1号ファンドの投資対象は子育て関連事業で、17年6月にユニファのBラウンド(10.2億円)に参加した。

女性キャピタリスト2人は、いかにして出会ったのか。黄は中国出身で、外資自動車メーカーのM&A部門で事業買収や売却を経験。「事業会社はデューデリジェンスを外部専門家に委託する。もっと自分でやりたい」と、05年に新生銀行の投資部門に転職した。

案件を重ねるうちに見えてきたのは、投資と子育ての共通点だ。「子育てのように、投資先に寄り添って、信じて成長を見守るところに面白さを感じます」。

一方、高塚はアルゼンチン大使館から新生銀行系サービサーへ。ドイツでのサービサー立ち上げに関わった縁で、07年に新生銀行の国際投資部に移った。紙の上で巨額が動く投資の世界に戸惑いも感じたが、「合理的な説明がつかなければお金が動かない。その明快さは性に合っていた」。女性が働くことの大変さを感じたのは、妊娠したときだ。

「新生銀行は女性活躍に理解のある職場です。それでも妊娠が分かったときは、女性の先輩方から『何かあったら言って』と手を握って激励されました。普段お話ししたことがない先輩がわざわざ声をかけてくださるのだから、よほど大変なんだと」

いざ子育てを始めると、「ニーズがあるのにそれに見合ったサービスが少ない」と思う場面は増えた。隣席だった黄も問題意識は同じ。悩みを共有するうちに、子育て分野で差別化できるサービスを2人で立ち上げようと盛り上がった。
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文=村上敬 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN リミッターを外せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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