生体データを送信する「バンドエイド型センサー」が実現間近

「BodyNet」はステッカーに金属インキをスクリーン印刷し、柔軟なアンテナを実現した(Photo by Bao lab.)

皮膚に貼りつけたセンサーから生体データを取得し、ワイヤレスで送信する技術が開発された。皮膚は人体にとって最大の臓器だが、既存のテクノロジーではそこから得られるデータを十分、活用できていなかった。

スタンフォード大学の研究チームは、皮膚が発する様々なシグナルを解析する無線センサーを開発した。これはバンドエイドのように、皮膚に貼って使用するものだ。

スタンフォード大学のZhenan Bao教授が率いる研究チームは、「ボディネット(BodyNet)」と呼ばれる生体指標モニターを開発した。ボディネットは取得したデータをRFID経由で、周囲の電子デバイスに送信する。RFIDとは、ID情報を埋め込んだRFタグから近距離の無線通信により、データのやりとりを可能にする技術で、ブルートゥースを用いてスマホやタブレットとの通信が可能になる。

ボディネットはパッシブタグと呼ばれる種類のRFタグを用いており、外部からの電波をエネルギーに変えるため電池を内蔵する必要がない。また、皮膚の動きに応じて柔軟に形状を変えられる点もメリットだ。

ただし、ここで課題となったのは電波を送受信するアンテナの開発だ。研究チームは、ステッカーに金属インキをスクリーン印刷し、柔軟なアンテナを実現した。シグナルの安定性を高めるために、博士研究員のNaoji MatsuhisaとSimiao Niuらは、強力なシグナルを送信する新たなRFIDを開発した。

その結果、ボディネットはデータを途切れることなく送信する技術を実現した。Bao教授はこの技術をまず、ヘルスケア分野に導入したいと考えている。これまでのところ、ボディネットを手首や腹部、ひじやひざに貼りつけた実験が進められており、レシーバーはクリップで衣服にとめられている。


BodyNetは皮膚の動きに応じて形状が変わる。取得したデータは衣類につけたレシーバに送られる(Photo by Bao lab.)

しかし、より広範囲な利用を想定した場合、現状よりも手軽に利用できる仕組みにする必要がある。研究チームは信号の送受信アンテナを軽量化し、衣服に縫い込む方法も模索中だ。

スマートウォッチなどの、生体データを扱うデバイスへの注目は高まっている。生体データをより簡単に、正確に把握することで、これまでにない利用ケースが生まれることが想定できる。

編集=上田裕資

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