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2019.05.30 06:30

「ただ預ける」だけではないトランクルームのニーズ 大学生の新しい使い方も

須貝 直子

mervas / Shutterstock.com

米国では約10世帯に1世帯が利用し、2兆円産業のトランクルーム市場だが、日本では約300世帯に1世帯の利用が現状だ。両国を比べると一見日本のトランクルーム市場は伸びていないように見えるがそうではない。

トランクルーム市場を牽引するキュラーズが毎年実施する「Annual Supply Survey」の試算によると、トランクルーム市場(屋内・屋外含む)は過去最高の590億円規模に大きく拡大している。

東京23区を中心に飛躍的な成長を続け、潜在需要の顕在化で利用者数は増加。今後も同等の市場拡大が続く場合、2025年には1000億円を超える規模に成長する可能性があり、日本も 市場拡大に期待が見込めると同社は見ている。



なぜ日本で市場は大きく成長しているのか。キュラーズの広報担当者に話を聞くと、背景に利用者の多様なニーズが関係していた。

大学生はロッカー代わりに利用

トランクルームの利用者の割合は個人が9割、法人が1割となっており、 女性の利用も多い。最近では、ビル一棟が丸々トランクルームの店舗が増え、立地環境によって様々な用途に用いられている。

大学の近くのトランクルームでは、学校に自分の荷物を置くスペースがない学生がロッカー代わりに利用することも少なくない。また、オフィス街に近いトランクルームでは法人の利用が増え、会社の備品を預けられることが多いという。


サイズが豊富で、管理するものに合わせて大きさが選べる。写真はBOXサイズのトランク。

高齢の方の中には、老人ホームに入居するタイミングで思い出の品や私物を預ける人も増えており 、利用者の生活の変化によって使い方が大きく異なる。

また、その生活の変化に伴う「引っ越し」も利用者の増加に繋がっている。

進学や仕事の関係で年始から春にかけて引っ越しの準備を始める人が多いが、その時期は「引っ越し難民」も増える。

2018年7月からキュラーズは、最大1.6畳分の荷物を自宅からトランクルームまで無料で運んでくれるシャトルサービスを一部地域を除く東京23区、横浜市、川崎市で開始。もともと、利用者の荷物運搬の手間を省くために開始されたサービスだが、利用者の幅は「引っ越し難民」にも広まった。

主なシャトルサービス利用者は、自分で荷物を一時的にどうにかしたくても、車を所有していない人や、車の免許が無い人などだ。この場合、トランクルームを利用するまでの背景には「引っ越し難民」である以前のニーズもあったといえる。

利用者はビジネスパーソンも増えており、「出張が多い人には、例えば東京と福岡など、出張先にトランクルームを借りる人も多い」と広報担当者は言う。資料など、出張先で必要な荷物を現地に預けられる利便性と、移動の際の荷物によるストレス軽減が考えられる。

毎日使う人、一時的に利用する人など、個々人のライフスタイルにより多様化するニーズに応えるトランクルーム市場は、潜在需要がさらに増えそうだ。

文=須貝直子 写真提供=キュラーズ

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