訪日外国人の増加より、日本人の出国率の低さが気になる

羽田空港国際線ターミナルの深夜便に並ぶ若い人たち

昨年の訪日外国人数は過去最多の3199万人だったが、日本人の海外旅行者数も微増(6%増)ながら1895万4000人(日本政府観光局)で過去最多だった。

日本人の海外旅行者数を押し上げたのは、韓国や台湾、香港など、近隣のアジア方面に出かける旅行者が増えたことにある。例えば、2018年の訪韓日本人は、前年比27.6%増の294万8527人(韓国観光公社)、訪台日本人も200万人強(台湾観光局)で前年より伸びている。

この数字から、「なぜ日韓関係がこれほど悪化しているのに、韓国を訪れる日本人が増えているのだろうか」と疑問を持つ人も多いに違いない。訪韓日本人の数は、2012年に過去最多の351万人となって以来、年々減り続けていたが、16年以降、再び増加に転じている。

その理由のひとつに、訪韓日本人の若年化があるようだ。年代別に見ると、以前は40代女性の数が最多だったが、16年以降は20代女性の数が最も多くなっている。

歴史問題を文化・旅行と結び付けない若年層

都内を代表するコリアタウンとして知られる新大久保を訪ねると、この現象もたちまち納得できてしまう。この街を行き交う人々のここ10数年の変化を眺めていると、かつて多く見られた中高年の女性の姿はめっきり減り、いまでは若年齢化が進み、ティーンエイジャーたちであふれている。

制服姿の高校生たちが、ジャンクな韓国式ホットドッグの屋台に並び、路上で立ち食いをする光景が日常となっているのだ。韓流や韓国コスメ、食材の店に群がるのも彼女たちで、まるで原宿のようなにぎわいだ。

ホットドッグ
韓国式ホットドッグの屋台に並び、路上で立ち食いをする光景が日常

実際に韓国へ旅行に行くのは、もう少し上の20代の女性かと思われるが、とにかく若い人たちには、国どうしの政治の事情などまるで関係なさそうだ。羽田空港国際線ターミナルの、ソウル行き深夜便の乗客の大部分を占めるのも彼女たちである。

韓流好きの事情通に聞くと、韓国を訪れる日本人の若年齢化と、いまの若い世代がテレビをまったく観ないことには関係があるという。彼らが旅行のための情報を入手するのは、もっぱらYouTubeをはじめとしたネットメディアで、自分たちに近い年代のYouTuberたちが海外の街をそぞろ歩き、屋台で食事をする姿などを観て、旅のイメージづくりをする。

そして、実際に旅行に行くことが決まったとき、初めて旅行ガイド本を手に取る。若い女性向けのガイド本には、食や買い物、体験ツアーなどの情報のみがコンパクトにまとめられていて、旧来のガイド書ではページが割かれていた各国事情や、テレビをはじめとしたメディアが日々報じているような国際関係の話題とは無縁である。

小学生も好き
もはや韓流は小学生の心までつかんでいるという

若い世代のテレビ離れは進んでおり、近頃では小学生の中にも韓流動画を観ながら、韓国語を学ぶ子さえいるという。この話は、中国の多くの若い世代がネットに流通する日本のドラマやアニメを通じて日本語を覚えたというエピソードを思い起こさせる。

興味深いことに、韓国でも「歴史問題を文化・旅行と結び付けない若年層が増えている」(中央日報日本語版2018年09月11日)という報道もある。ことのよしあしはともかく、ネットがもたらす世代による情報環境の乖離は、各国に共通した現象といえるかもしれない。
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