女性だらけの「AIアシスタント」に浮かぶジェンダーの課題

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銀行や大手企業がウェブ上の顧客対応に用いるAIアシスタントの多くは、女性の名前を持っている。典型例としてあげられるのが、アミーやデビー、インガ、ミア、エリカといった名前だ。

「チャットボット」と呼ばれるこれらのAIアシスタントは大手企業の、顧客対応コストを削減する効果があり、保険業界や通信キャリアでの活用も拡大中だ。調査企業Juniper Researchは、銀行業界がボットの活用でコールセンターの人員を削減し、2023年までに73億ドル(約8000億円)のコストを削減すると述べた。

しかし、多くのボットに女性の名がつけられていることは、ジェンダーのステレオタイプを助長するとの見方もある。職場で女性はアシスタント的役割を果たす、という偏見を助長させるのだ。

アップルのSiriやアマゾンのAlexaなど、ほとんどのAIアシスタントは、リリース当時は女性の声が先にあり、後に男性音声バージョンが追加された。

HSBC銀行のチャットボットの名前はアミーだ。ドイツ銀行の場合はデビー。オランダのING銀行はフェイスブックメッセンジャーで一般の顧客対応を行うボットを、マリーと名づけたが、その理由は「親切で親しみやすいイメージを重視した結果」という。

しかし、INGは企業顧客向けには、ビルという男性のチャットボットを用意している。

同様な状況は米国やオーストラリアでも見られる。バンク・オブ・アメリカのAIアシスタントはエリカだ。また、オーストラリアのUBankのミアは「親しみやすくて、面白い、ちょっと生意気な」というキャラ設定になっている。

ボーダフォンはチャットボットの導入によって、将来的に大幅な人員コストの削減が可能になると述べている。しかし、フォーブスの取材で多くの関係者が、チャットボットがジェンダーのステレオタイプを増幅する懸念を示していることが分かった。

英国のスタートアップ企業「action.ai」のCEOのJohn Taylorは「チャットボットの多くは、オフィスで雑用とみなされる仕事を請け負っている」と話す。

Taylorはソフトウェア開発にあたる人々が、もっと男性のボイスを持つチャットボットを増やすべきだと述べた。

筆者は先日、ロンドンで開催されたテクノロジー系カンファレンスで米ワシントン州レドモンド在住のAIエンジニア、Seth Juarezに話を聞いた。Juarezは彼のiPhoneのSiriを男性のボイスに変えて使用していた。

「現状では顧客サービスに用いられるチャットボットの大半が、女性の名前だが、これは非難されるべきことだ。その一方で、IBMのワトソンなどのインテリジェンス系のボットは、男性の名前になっている」と彼は話した。

編集=上田裕資

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