ライフスタイル

2019.02.10 17:00

31歳で後を継いだ二代目社長、「佐藤可士和の教えと四十の手習い」

ビューティーエクスペリエンス代表取締役社長 福井敏浩

ヘアサロンや一般市場向けの美容製品の製造・販売を行うビューティーエクスペリエンス。2代目社長の福井敏浩に、創業者の父から学んだことや人脈のつくり方について聞いた。


ヘアサロンや一般市場向けに、ヘアケア、ボディケアなどの商品を開発しています。1975年に父が創業し、2015年の創業40周年に社名を変更しました。新ミッションステートメントは「人生に、新しい美の体験を。」。あらゆる人の五感を美しく刺激し、人生の豊かな感動を届けたいという想いを込めています。

父の起業は私がきっかけでした。ふたりの娘のあと、息子(私)が生まれ、「何かかたちあるものを残したい」と思ったのでしょう。創業当初は家の一角が仕事場で、信用金庫の方が給与の支払いのために来られて、幼い僕は机に積まれた札束で遊んだ記憶がありますね(笑)。父は今日一日あったことを夕食時に母に話すような人でしたので、そんな父の話から会社というものがどういうものか、自然と学びました。

31歳で父が亡くなり、後を継いだのですが、15年の社名変更はやはり「先代から借りていたスーツを仕立て直そう」というような気持ちだったと思います。父は創業者らしくワンマンで、社員を家族だと捉えていました。それこそ社員の方もうちの父のことを「うちのオヤジが」というような関係性。

私はそういうタイプではないので、昔から社員に対しては敬語で話すようにしています。ビジネスモデルも、父の時代にはなかった独自の世界観や価値をつくることに重きを置いています。

そのためには、先入観を抱かないことですね。人や本やネットから情報を得るときに、いつも真っ白な状態で相対するように意識しています。例えば、社名変更を伴う新コーポレートアイデンティティの導入はクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんに行っていただいたのですが、これも「弊社のような小さな会社は頼んでもダメだろう」と思わなかった賜物(笑)。

佐藤さんとは1年ほどディスカッションをして、子どものときに何が好きだったか、何が楽しかったかというような質問に答えて……。「人間の本質的な喜びは子ども時代にあり、それが新しくつくる会社にも活きる」というようなお考えでした。

社長業は分刻みですから、オフの時間は大切にしています。四十の手習いと申しますが、長男がアイスホッケーを始めたときに、私も父親チームに加入。プレイ自体も愉しいですが、異業種交流の点でも貴重ですね。自分が経験していないことを聞けるし、相手から請われれば自分の話もする。「福井さんと話していて頭の整理ができました」と言われたこともありました。

異業種交流といえば、40歳で早稲田大学のMBAに通ったんです。そこでも人脈が広がりました。そんなことになるとは思っていなかったけれど、クラスメイトに入社してもらったり、早稲田の教授に社外役員として入ってもらうことになりました。

また、それまでは我流で本を読んでいましたが、MBAで体系的に経営というものを整理できたのは大きかったです。外資系出身の優秀な方に参画してもらうなど、仲間の幅が広がりましたね。スポーツでも学業でもなんでもいいのですが、大人の手習いはオススメです。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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