同フォーラムでマスクは、「今後を予測するなら、バッテリーではなくなる可能性は大いにあると思っている。キャパシタ(コンデンサ)になる」と語っていた。
マスクはその予測を自ら現実に変えたのかもしれない。テスラはこのほど、エネルギー貯蔵デバイスである「ウルトラキャパシタ」の特許を所有する米マクスウェル・テクノロジーズを買収することで同社と合意した。
カリフォルニア州サンディエゴに拠点を置くマクスウェルは、EVのバッテリーや再生可能エネルギー・システムに利用可能なドライ電極の製造技術を持つ。テスラは株式交換方式により、同社を完全子会社化する。
マクスウェルのフランツ・フィンクCEOはテスラについて、「高く評価される世界レベルのイノベーターであり、より持続可能な未来を築くという私たちと共通の目標を掲げている」と発言。今回の合意に「胸を躍らせている」と述べている。
合意はマクスウェルの「株主に最大の利益をもたらすもの」であり、同社の「投資家には、持続可能な輸送手段とエネルギーの実現を加速させるというテスラの使命を共有する機会を提供するもの」と考えているという。
リチウム電池を「超える」技術?
現在EVに使用されているリチウムイオン電池は高価であり、重いことが指摘されている。消費者に人気の大型で重量のある車に十分なバッテリーセルを搭載し、従来のガソリン車に匹敵するような航続距離を実現しようとすれば、コストが問題になる。例えばテスラ「モデルX」の価格は、13万ドル(約1420万円)だ。
マクスウェルの「ウルトラキャパシタ」は、こうした問題を解決する鍵を握るものとなる可能性がある。キャパシタはバッテリーのようにエネルギーを蓄えるものだが、ごく短時間で充電することができ、放電効率も高いことが特徴だ。
また、寿命が大幅に長くなることから、頻繁に充電しているテスラ車の所有者の多くが抱えるバッテリーの劣化という問題の解消にもつながる。
ただし、2011年にマックスウェルのCEOだったデイブ・シュラムはキャパシタについて、技術は向上するだろうとしながらも、次のような見方を示していた。
「現在の構造のウルトラキャパシタは、リチウム電池に取って代わることはできない。これらは大きく異なるものだ──バッテリーは蓄電、キャパシタは出力に強みを持つものだ…ウルトラキャパシタがバッテリーに“勝るもの”になるとは思わない。“補完するもの”になると考えている」
この技術は今後、航続距離に関する不安の解消とバッテリーの小型化を後押しするものになると見込まれる。エネルギー貯蔵関連の事業にも適用できるだろう。
テスラによる買収は「まれ」
一方、テスラが企業を買収するということ自体も、重要なニュースだ。自らによる革新と独自の技術ソリューションの導入を好む同社が他社を買収した例は、これまでほとんどない。
ただ、テスラの広報担当者はこれについて、以下のように述べている。
「事業において有用であると考えられる買収、世界的な持続可能なエネルギーへの移行を加速するというテスラの企業理念を支援することになる買収については、常に可能性を探っている」