ビジネス

2019.02.01

Gmailの発想を生んだグーグルの社食に「カウンター席がない」理由

株式会社ノンピ取締役 荒井 茂太


社食1.0、社食2.0を経て、今は「社食3.0」の時代

社食は、通常の外食産業と違って、ある一定数のお客さんは黙っていても来てくださいます。そういう「コントラクト(契約)・ビジネス」なので、とかくサービスが固定化されがちなんです。

20〜30年前の社食は、食べる人のお腹を満たせばよかった。それが「社食1.0」。その後、タニタブームも手伝って、健康+おいしい、を意識した「社食2.0」に移行しました。そして現在は「社食3.0」のフェーズ。「食を通じてのコミュニケーション」を追求する場に変わって行かなければと思っています。

社食業界では、提供する側はとかく、変化によるリスクを好まない。でもそこを変えなければ、「3.0」の時代には生き残っていけない。何よりもその企業のカルチャーを理解していること、その企業と一緒に成長、変化していける柔軟性や、企業側に立った本気の当時者意識が必要とされていると思うんです。

ノンピは2003年創業ですが、今年、グーグルの伝説的プロダクト・マネジャーだった及川卓也さんが技術顧問として参画してくださるほか、私とコンビを組んでいたグーグル・ジャパンの初代総料理長も入社しました。その他グーグル元エンジニアや何名か入社してくれることになっています。

こんな仲間たちも一緒に、食を通じたコミュニケーションからGmailを超えるイノベーションが起きる瞬間をもう一度、目撃したいですね。



トップ・ティア戦略につながった「恩返し」

私の仕事のモチベーションは、サッカー選手時代、バリスタ時代、そしてグーグル時代と、それぞれに恩返しがしたいということ。

中でもグーグルへの恩返しが、すなわち「社食」の仕事に本気で関わるきっかけです。当時お世話になった人たちが、「グーグルの社食で食べた荒井さんのご飯が恋しい」と言ってくださる。見渡すと、グーグル卒業生は名だたる企業の主要ポジションや素晴らしいスタートアップ企業に移ってらっしゃった。そして彼らから、自分の会社の社食を変えたいという話がくるようになりました。

そんな「卒業生つながり」でいろいろご相談を受けたりしている中で、グラクソ・スミスクラインの溜池山王オフィスのカフェの運営なども、コンペを経て任されました。「卒業生つながり」ではないですが、三菱地所の社食の運営もさせていただくことになりました。その両社が2018年に「日経ニューオフィス賞」経済産業大臣賞を受賞の1位、2位を受賞したこともあって、多くの企業から声がかかるようになったんです。

とくにこの両社については、総務担当者の「社食を本当に良くしたい、変革したい」という想いの熱量が高く、そこに共感しました。一緒に社食3.0、その先の4.0を一緒に生み出せると思っています。

こうした業界の主たる企業からお話をいただくので、結果的にはトップ・ティア戦略で、裾野を広げて行くことができています。結局は恩返しをするつもりが、まだグーグルにお世話になっていますね。
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文=石井節子

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