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2019.01.24 08:00

キーワードは「ありのままで」──m-floが明かす、日本がグローバルで「勝つ方法」 




本田:午前中のセッションで、インフルエンサーを使ったPRの話が挙がっていたのですが、例えば海外に出ていくとき、インフルエンサーに対する考え方はどうですか? 影響力のある人たちがいると考えますか?

☆Taku:コミュニティドリブンという考え方はあります。それぞれの地域でリーダーシップを発揮するようなファンがいたり、いろんなグループにファンの番長的みたいな存在がいたりするじゃないですか。

昔はCDをリリースして、オリコン1位取ったら普通に50万枚、80万枚売れる時代だったのですが、今はそういう時代ではない。それはいろんななものが選択できるような時代になったからで、当時は選択肢が少なかったと思うんです。

例えば、世の中で販売されているプロダクトの数も、いまの時代の方が多い。なかなか全体的にマスで売るのが難しくなっているわけです。ただ、売ること時代が難しくなったわけではなくて。これは多くの人に気づいてもらいたいことなのですが、今夜もきっと武道館であなたの知らないバンドが満員のライブを開催している。いまはそういう時代なんです。

だからこそ、熱量がある人たちと接点をつくり、どうやって熱量を爆発させていくかを考えることがすごく重要だと思っています。

本田:VERBALさん、いかがですか?

VERBAL:これは個人的な見解ですが、僕がファッションをやっていて感じるのは、日本のインフルエンサーマーケティングのマーケットはマチュア(成熟している)だな、と。前みたいに、有名人が着用すれば簡単に直売に繋がる時代ではないし、複雑化してきている。エンドユーザーの情報リテラシーも高くなってきていて、一筋縄ではいかない。

それに対して、中国では「KOL(キー・オピニオンリーダー)」と呼ばれるインフルエンサーを使ってマーケティングを行う会社もあって、その人のCMが流れたら商品がすごい勢いで売れる。

ある意味、中国は今のところ分かりやすいマーケットなので日本と違う部分も多いかなと思います。ただ、日本はいい意味で複雑だからこそ美学があって、次のステップへのヒントにもなるのかなと思いますね。

コンテンツのコンテクストは変えようとしなくていい

本田:そうですね。もう少し時間もあるので、控え室で話していた「コンテクスト」についても質問させてください。よく業界では「日本人はハイコンテクストすぎるので、もうすこしシンプルにした方がいい」と言われます。コンテクストの違いについて、m-floの2人は今までの経験の中で、何か感じられることはありますか? 

VERBAL:TakuのOTAQUESTの話に戻ってしまうのですが、2018年7月にアメリカ・ロサンゼルスにて行われたANIME EXPOで「m-flo presents “OTAQUEST LIVE”powered by LDH USA」というライブイベントを開催させていただいたんです。



そこで、まさにコンテキストライゼーションの話になりました。「やっぱりアメリカに行ったら、みんなこういう曲を聴きたいんじゃない?」と考えちゃうわけですよ。

いまのロサンゼルスの人たちはどんな波長なのかを、こっちでいろいろ考えるんですけど、意外とみんなベタな曲を聴きたがっている。m-floに関しては、初のアメリカでのライブで、なおかつメンバーのLISAを交えて行うライブも初めてだったので、「これはすごくアウェーだけど、とりあえず気合いでやるしかない」みたいな感じで行ったんです。

参加者の4000〜5000人のうち、ほとんどは外国の人たちだったのですが、日本の曲を披露したら合唱してくれるんですよね。

☆Taku:日本語を喋れないような人たちが日本語で歌ってくれる。

VERBAL:それを見て、コンテキストライゼーションは少しでいいんだと思いました。イベントを行う際の運営方法など、現地の細かいコンテクストには合わせるべきですが、コンテンツに関しては直球でよかった。

本田:海外向けPRになると必要以上に悩んでしまい、海外の人たちに伝えるために変えすぎてしまう。もちろん変える必要があるときもありますが、変えすぎてしまうと上手くいかないこともありますよね。

☆Taku:考えすぎてしまう根源が、情報の少なさなんですよね。マーケティングツールがあれば、「この曲は絶対テッパンだよ」「このプロダクトは絶対ここに響くよ」といったことが分かるんですけど、そこら辺がまだできていないなと思っています。

OTAQUESTのプロジェクトでやりたいことはウェブサービスから始めて、どんどん発展させて、いろんな地域でライブを開催して会員制のシステムをつくり、日本の人たちが海外展開する際のマーケティングツールになることです。

グローバルにおける日本の突破口は「アニメ」にある

本田:今日はm-floさんならではのミュージック、エンターテインメントの文脈から話を展開していますが、ファンベースを見つけて、熱量の高い人たちとの接点をつくることは、いろんな企業においても大事になる考え方かと思います。例えば、OTAQUESTはPRプラットフォームとして、熱量高い人たちとつながっていく可能性がすごくあるように思えるのですが、どうですか?

☆Taku:僕らはスタートしたばかりなので、いろんな可能性があると思っています。このプロジェクトはLDHが本気で日本のコンテンツを海外で成功させるためにやっている。LDHだけではなく他のアーティストとのコラボもそうですし、他の企業とコラボして飲食のプロダクトをつくっていくのも方法のひとつだと思っています。いい意味で悔しいのは、韓国の取り組みです。辛ラーメンとアーティストがコラボしているんですよね。

本田:辛ラーメンは意外と韓国的にはPRプラットフォームかもしれないですね。コラボレーションも多いですし。

☆Taku:そういったエンタテインメント領域とは異なる企業と一緒に、日本のプロダクトを本格的にアメリカで展開していく。アメリカで成功するとブランディングになる。単純に「こんにちは。日本です」というより、「こんにちは。いま、アメリカでもすごく評判がいい僕らです」と言った方がいいじゃないですか。



VERBAL:アメリカでの盛り上がりをつくったことを武器に注目される発想ですよね。それはすごく大事なことだと思っています。何しろ、アニメは日本のものじゃないですか。

K-POPは韓国なんですけど、アニメは日本なのでチャンスしかない。なぜ誰も気づいていなかったんだろうと思うくらい、突破口のひとつでもありますし、これを上手く形にしていったらスケールしていく。そのポイントも見えてきました。

Takuがさっき言ったように、日本の人たちは英語を喋れても、自分から積極的に話しかけにいけない。ただそこは、本当にチャンスだらけだと思うんですよね。
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文=新國翔大 写真=PR Table提供

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