地方の小さな大学院大学が、アフリカのエリート留学生を集める理由

神戸情報大学院大学ICTイノベータコース入学式


KICの2016年度修了生、カバリサ・レネ氏は、ルワンダ政府のICT省に復帰すると、局長レベルの役職に抜擢される。現在は、IoTやドローン技術を活用したスマートシティの推進役を担っている。


レネ氏が勤務するルワンダICT省大臣が訪日し神戸市長と覚書を締結(2018年3月)

また、大阪での万博開催を決めた日本政府が、誘致活動の鍵を握るとされる2017年11月にパリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会でのプレゼンターに選んだのは、2017年度修了生のジョアキム・ルタイシレ氏であった。アフリカの票を押さえたい政府は、このKICの学生に白羽の矢を立てたのだ。

小さくても世界を変える大学に

地元自治体である神戸市が、このチャンスを見逃すことはなかった。なぜなら、経済成長など魅力あふれるアフリカだが、日本国内の企業が関心を持っても、容易に手が出せなかった。

ところが、優秀な卒業生による現地とのネットワークは、ビジネスを始めるには格好の手掛かりとなる。そこで神戸市は、「アフリカとの経済交流」を施策に掲げて、2016年から民間企業による調査団を毎年現地に派遣している。さらに、来年2月には、起業家や大学生を日本から現地に送り込み、起業を実践するという自治体では異彩を放つプログラムに挑む(12月15日まで参加者募集中)。

これらの動きを主導した、KICの福岡賢二副学長は、「これまでの日本の教育とは一線を画した、人種のるつぼのような教室や研究室を実践したかった。それがアフリカの国々には刺さったのだろう。小さくても世界を変える大学になりたい」と話す。

確かに、新興で小規模だったからこそ柔軟に動けたことは否めない。しかし、日本の大学が、ハーバード、スタンフォードなど世界水準の大学に比べるとハイレベルな留学生を集められず、世界的に存在感を発揮していないと言われるなかで、KICが実践する試みには、それらを打開するヒントが潜んでいそうだ。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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