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2018.11.07 06:00

アリババ追撃の美団点評が狙う、3.5億人の食のプラットフォーム化

美団点評のフードデリバリー中のバイク(Freer / Shutterstock.com)

中国のテック業界大手の「美団点評(Meituan-Dianping)」はフードデリバリー事業から多角化を進め、アプリ一つでレストランや旅行の予約、映画チケットの購入まで行える、総合ライフスタイルサービスに成長した。

当初はグルーポンの模倣から始まった美団点評は、今ではアリババのフードデリバリー「Ele.me(ウーラマ)」を競合と見据え、人々により便利な暮らしを提供しようとしている。

中国政府がインターネットの活用を奨励する「インターネットプラス政策(互聯網+)」を打ち出すなかで、美団点評はさらなる事業拡大を目指し、サービスの刷新プランを打ち出した。同社は3億5700万人の顧客と510万社の提携事業者を抱え、配送スタッフの数は52万9000人に及んでいる。

美団点評は9月に香港市場で上場を果たしたが、ニュースサイト「KrASIA」は同社の社内向けメモを入手し、11月1日の記事で、そこに記載された事業刷新プランについて報じた。美団点評は「フード+プラットフォーム」という戦略を打ち出し、事業基盤のさらなる強化を進めていく。

同社はインストア(店内)とホーム(家庭)、サービスプラットフォームの3つを軸に、事業を拡大していく。出前サービスから始動した美団点評が新たに注力するのが、アマゾンにとってのホールフーズに相当する、生鮮食料品の販売だ。同社は既に北京に「Ella Supermarket(小象生鲜)」と呼ばれるブティック型スーパーマーケットを開設し、アリババの生鮮食品スーパー「Hema」と類似したオートメーション化されたサービスを提供。新鮮なシーフードが店内で食べられるイートインスペースも設けている。

KrASIAの報道によると今後、美団点評の生鮮食品部門を統括するのは、同社の旅行予約サービスを中国最大の旅行予約サイト「Ctrip」に匹敵するレベルに成長させたChen Liangだという。

現状でフードデリバリーに軸足を置く美団点評は、黒字化を果たせておらず、新たな収益基盤として生鮮食品部門を強化するのは理にかなった動きだ。今後はデリバリーの現場へのロボットテクノロジーの導入や、今年4月に買収した自転車シェア企業「モバイク」のリソースを、配達部門に役立てることも予想される。

美団点評の創業者でCEOのWang Xingは、同社の使命を「中国のマーケットプレイス市場のスタンダードを引き上げること」としており、「未来のことを真剣に考えるのであれば、我慢強く物事を実行していかねばならない」と述べている。

かつて、米国のグルーポンを模倣したインターネット業界のパクリ屋だった彼は今、美団点評で独自のイノベーションを実現しようとしている。

編集=上田裕資

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