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2018.08.27 19:00

マセラティが世界初、太平洋豪華クルーズ上で発表した「レヴァンテ GTS」詳細レポート

360度、見渡す限り広がる碧い海と空。潮風に吹かれ、穏やかな波の音を聴きながら、プロセッコのグラスを傾ける。そう、ここは太平洋を航行する豪華客船上だ。 イタリアの高級車ブランド「マセラティ」が8月19日夕、太平洋を航行中の巨大なイタリアのクルーズ船「MSCスプレンディダ」上でSUVの人気車種「レヴァンテ」の新モデル「ニューレヴァンテ GTS」のジャパンプレミアを行った。Forbes JAPAN編集部が同行取材した。



世界初、太平洋上での新車発表

マセラティ ジャパンによると、太平洋上での新車発表は世界初。なぜよりによって海上での発表を敢行したのか。日本撤退を表明する海外ブランドが相次ぐ中、なぜマセラティはここまで日本市場を大事にするのか。 マセラティの世界の販売台数の半数以上を占める人気のSUV、レヴァンテの魅力とは――。

クルーズは横浜・大黒埠頭を出発し、4日間かけて中国・上海に到着する行程で、MSCクルーズが今年初就航したルートだ。マセラティは今回、MSCスプレンディダの特別エリアであるヨットクラブを貸し切り、日本の顧客を招いた。過去何台もマセラティを乗り継いできたファンや、マセラティを複数台所有する家族ら60組が参加し、盛夏の海の旅を楽しんだ。



ジャパンプレミアは2日目、ヨットクラブメンバーしか立ち入ることのできない、最上階のデッキで行われた。夕陽が水平線を赤く染め始める頃、華やかな装いに身を包んだファンが見守る中、マセラティ ジャパンのグイド・ジョバネッリ代表取締役が挨拶した。



「みなさまと素晴らしい時間を共有し、MSCクルーズの協力を得て、新しいレヴァンテを紹介させていただくことができ、感謝申し上げます。長い準備期間を経て、ここまで大それた、クレイジーなプロジェクトを実現させたのは、マセラティというブランドの歴史と伝統に基づいたラグジュアリーを皆様に体感いただきたかったからです」

ライトアップされたグレーの「ニューレヴァンテ GTS」がアンヴェールされ、甲板に歓声が上がった。



ジャパンプレミアに参加した東京都の会社役員の男性は「うちはグランツーリスモとの2台持ちで、レヴァンテは妻が好きなんです。子どもも大ファン。潮風に吹かれながら、海の上での発表会というのは気持ちがいいですね。マセラティは海にルーツがあるので、ファンにとっていい体験になりました」と語る。

海に由来「トリデンテ」を体感

マセラティのエンブレムであるトリデンテは、ギリシャ神話の海の神ポセイドンの持つ三叉の矛をイメージしデザインされた。今回、マセラティは船内にショールームも開設。太平洋上のクルーズを楽しみながらマセラティの世界観を体感できる一連の旅を「トリデンテ エクスペリエンス」と名付けた。


(マセラティ提供)

メディア・アイコンとして活躍するモデルのまつゆう*さんも参加。「様々なラグジュアリーブランドの発表会やパーティーに参加してきましたが、海の上というのは初めてで、新しいブランド体験ですね」と驚いていた。



高さにして地上約70メートル。規制の厳しい日本発の船舶で、重厚なSUVを巨大なクルーズ船のデッキに載せるのは困難を極めた。マセラティ作成のムービーには、分厚い土台に載せたニューレヴァンテGTSをクレーンで吊るす様子が収められている。



オールイタリアで徹底、世界観を演出

「イタリア人はたまにぶっ飛んだアイデアを生み出します。でもそれを実現させることが、イタリアらしさなのです。MSCグループは300年以上の歴史ある会社で、『海の覇者』というカンパニーポリシーがあります。イタリア発のラグジュアリーなクルーズ経験を提供したいという点で、マセラティ ジャパンと思いが合致しました」と語るのは、MSCクルーズのオリビエロ・モレリ社長だ。



マセラティは同じイタリアブランドのエルメネジルド ゼニアやブルガリともパートナー契約を結んでいる。今回の旅でMSCクルーズとタッグを組み、オールイタリアで船上のゲストをもてなした。


船内に設けられたエルメネジルド ゼニアのブース(マセラティ提供)

躍進のレヴァンテにV8エンジン搭載

マセラティは2017年、日本国内で1900台を販売。前年比37%増の伸びを牽引しているのが同社初のSUVであるレヴァンテだ。マセラティ ジャパンによると、レヴァンテは国内販売台数のうち半数以上を占める。

長らくマセラティのフラッグシップモデルであるクアトロポルテGTS専用とされていたパワフルなV8エンジンが、この度ニューレヴァンテ GTSに搭載されたことも、マセラティがレヴァンテに注力している証拠だ。ジャパンプレミアではボンネットが開けられ、お披露目された550馬力のV8エンジンがフラッシュを浴びていた。



同席したモータージャーナリストの九島辰也氏はこのように分析する。

「世界的にSUV人気が続いていますが、最近になってプレミアムブランドが続々と魅力的なSUVを出し、SUV人気をアッパークラスにまで引き上げました。なかでもレヴァンテはマセラティが作るSUVへの期待をそのまま形にしているところが人気の理由です。これまでのV6ターボでも430馬力あり十分だったのですが、V8を積むことに、レーシングカーから始まったブランドの気概を感じます」



急成長する中国市場に注力し、縮小する日本市場からの撤退を表明するメーカーが相次ぐが、九島氏は「ラグジュアリーブランドにとって日本市場はまだまだ魅力があります」と語る。「日本には成熟したカーカルチャーがあります。各ブランドのヘッドクオーターは、日本という市場が特殊なところだと理解し、変わらず重視しています。特に高級車はアジア市場を見据え、まず日本で成功させるというのが一つのセオリーとしてあるんです」

日本市場、プレミアムブランドに勝機

マセラティが日本の顧客を重視するのもその理由だ。グイド・ジョバネッリ代表は船上のインタビューでこう話した。



「日本の自動車市場は厳しいと言われますが、全体的な市場が縮小しているとはいえ、プレミアムブランドにおいては、まだまだ可能性が広がっています。現にマセラティの昨年の日本での販売台数は前年比40%弱のアップを実現させ、世界的にも大きな伸び率を記録しています。マセラティが現地法人を構えているのはアメリカ、カナダ、スイス、中国、そして日本で、日本市場に重きをおいていることを物語っています」

なぜクルーズ上なのか。これからのクルマはどうなるのだろうか。こうも語った。

「プロダクトとしての車のデザインや性能はもちろん大事なことです。それと同時に、非常に大事なポイントだと思っているのが、お客様とマセラティの精神をシェアすることです。今回の旅を『トリデンテ エクスペリエンス』と名付けたのも、車だけでなく、ライフスタイルとして、サムシングイタリアンを感じて欲しかったからなのです。イタリア語でパーソナライズを『ス・ミズーラ』といいます。マセラティも、ス・ミズーラの精神で、お客様の個性や要望に寄り添ったサービスを磨き、より素晴らしいエクスペリエンスを提供していきます」

文、提供画像以外の写真=林亜季

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