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2018.08.12

画像共有アプリで「醜形恐怖症」の人が増加か、医師らも懸念

VH-studio / Shutterstock.com

画像加工技術の普及と画像を共有する機会の増加について、医師たちが懸念を強めている。私たちが自分自身を見る目を、これらが大きくねじ曲げてしまう可能性があるためだ。

画像が原因でゆがめられた自己イメージを持つようになることには、非公式ながら“疾患名”もつけられている──「スナップチャット醜形恐怖症」だ。もちろん、発症の原因となるのはスナップチャットだけではない。

インスタグラムやフェイスブックについても、「自己嫌悪」などを示す言葉を付けた別の疾患名を考えることができるだろう。これらは基本的に、ソーシャルメディア上であまりにも数多くの非現実的な画像を見ることによって引き起こされる。

「スナップチャット醜形恐怖症」の基になったのは、自分自身の容姿に対して大幅にゆがんだ見方を持ち、それにとらわれる精神疾患の「身体醜形障症(BBD)」だ。BBDの一形態であるスナップチャット醜形恐怖症の人は、自分で欠点だと思っている部分について執拗に鏡で確認したり、何度も身づくろいをしたり、自分の外見について人に尋ねたりといった強迫行為を繰り返す。また、不要な美容整形手術を受けることさえある。

米ボストン大学の研究者らは米国医師会雑誌(JAMA)の姉妹誌「JAMA Facial Plastic Surgery」に先ごろ発表した論文で、これまでは日常的に自分の顔や体を写した画像を加工するのはモデルや俳優だけだったが、いまやそうではないと述べている。

画像を加工したりフィルター処理したりするアプリや画像共有プラットフォームが氾濫している現在、私たちの誰もがそうした意味では実質的に、セレブたちと同じになれる(名声や収入に関しては別の話だ)。こうした状況は、深刻な結果をもたらし得る。摂食障害や、感情面に問題を持つ人の増加につながる可能性があるのだ。

この論文で研究者たちは、セルフィーの中の自分の外見を加工することが、美容整形手術を受けたい人の増加につながっていることも指摘している。当然ながら、スマートフォンでセルフィーを加工することと、メスや化学薬品で自分自身の体を変えることには大きな違いがある。

深刻さを増すこの問題に、私たちはどう対応すべきだろうか──?アナログ写真しか存在しなかった時代に、社会が逆戻りすることは決してない。デジタル技術は今後も進歩を続ける。何が現実かを識別することは、より困難になっていくだろう。つまりそれは、解決策は画像や技術ではなく、私たちの中にあるということを意味する。

私たちの社会は、外見やそれに関して恣意的に選ばれた基準に過度に執着するようになってしまった。あなたも他の多くの人たちも、単純にその人の外見を理由に、同僚や友人、交際相手、そして話を聞くべき相手を選んでいるかもしれない。それは、私たちがあまりにも、誤ったことに重きを置いている可能性があるということだ。

スナップチャットにもインスタグラムにも、今のところ画像に思考能力や洞察力、思いやり、人格を付け加えられるフィルターはないとみられる。私たちは自分自身の本当の才能や能力、スキルを高めることに力を注ごうとすべきだ。スナップチャットやインスタグラムで簡単に変えられるものは大抵、初めからそれほど価値あるものではないと考えられる。

編集=木内涼子

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