ビジネス

2018.06.27

VALU、再び表舞台へ──彼らが目指す信用経済のあり方、資本主義のその先

VALU代表 小川晃平

貨幣による取引ではなく、個人の信用をもとに取引を行う──信用経済という概念が「VALU」の登場を機に注目されるようになった。VALUは個人の信用をトレーディングカードのように「VALU」とよばれるトークンを発行できるサービス。売りに出されたVAは自由に売買(人気に応じて価格は変動)することができ、取引は全てビットコインを用いて行われる。

2017年5月31日にリリースされるや否や、ホリエモンこと堀江貴文がVALUについてコメント。SNSを中心に大きく話題を集めた。

サービス開始以降、ユーザーを増やす一方で、VALUの仕組みを悪用した事件も発生した。ユーチューバーのヒカルをはじめとした3名がVALUでの今後の活動を匂わせる発言をし(VALU内の投稿で)、注目を集め、価格が高騰したタイミングでVAをすべて売却。法的な問題には問われなかったものの、株式市場でいう「価格操作」にあたるとし、批判を受けた。

この事件を機にVALUのサービス内容を問題視する声が生まれ、実際に同社も利用規約の一部を改訂。対応に追われた。さらには2017年末から2018年初旬にはVALUの根幹でもあるビットコインの価値が急騰するほか、コインチェックのNEM不正流出事件が発生。直接的な関係性はないものの、VALUの仕組みに懐疑的な声も増えていった。

ユーチューバーの事件から約10カ月。「最近、VALUを聞かなくなった」という声が聞こえ始める中、VALUは再び表舞台に戻ってきた。7月中のiOSアプリのリリースを予定。ユーザーの利便性をより向上させていくという。

VALUの現状はどうなっているのか。また、彼らが考える「信用経済」のあり方とは。VALU代表の小川晃平に直撃した。

いま、VALUはどうなっているのか?

──ユーチューバーの事件から10カ月ほど経過しました。まずは現状を教えてください。

7月中にiOSアプリをリリースします。これまではWeb上でのサービス提供に限られていましたが、iOSアプリをリリースし、ユーザビリティを向上させていきたいです。規制を遵守し、関係各所への確認をとりながらサービスの運営を進めているので、想定していたほどのスピード感が出せない。

新しい試みなので仕方のないことですが、正直、つらいですね(笑)。

──事件の際にはサービス自体の法的問題も問われていましたが、どのような点が問題だったのでしょうか。

VALUは個人のトークンを発行するサービス。トークンは有価ではあるが、有価“証券”ではないと捉えサービスをリリースしました。しかし、倒産しない限り存続し続ける企業と違って、突然亡くなることもある「人」に有価証券のような価値をもたせるのは危険だ、VALUには本源的価値がないという批判を受けました。ご意見は真摯に受け止めつつ、日々、法整備の状況をウォッチしながら、関係各所の見解と足並みをそろえ、開発を進めています。



──リリース直後から、急速にユーザー数を増やしていった印象があります。当時、どんなことを考えていたのでしょうか?

「こんなにバズるの!?」と思ったのが、リリース直後の正直な感想です。それ以降は驚きの連続でした。YouTuberの事件が起きたのは想定外のことでしたし、サービスの正しいあり方とは何かを考えるきっかけになりました。10月以降はビットコインの値上がりに驚き、2018年1月からはコインチェック騒動に驚いていました。限られた人数で開発を行っているため、注目されればされるほど運用にリソースがとられ、開発が二の次になってしまう状況が昨年は続いていました。そのため、昨年末以降、開発に専念するためメディアへの露出を控えるようにしました。

ユーザー数は、一時期だいぶ落ち込みましたが順調に回復し、いまは事件前よりも大幅に増えています。初期の盛り上がり時には登録者数4万人程度でしたが、いまは約10万人。VA発行者も2万人を突破しています。

利用者はかなり幅広いですが、クリエイター系の方が多いです。動画実況者や寿司屋、農家まで幅広い人たちに利用してもらっています。騒動の前後で変わったことは、インフルエンサーの割合が少し減ったことくらいですかね。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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