中国がVPN規制をさらに厳格化、外国人への影響は?

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中国政府は、VPN(仮想プライベートネットワーク)に対する規制を強化しており、中国のネット民にとってはフェイスブックやウィキペディア、ユーチューブなどの禁止されたウェブサイトにアクセスすることがこれまで以上に困難になっている。中国政府は、これらのサイトには反政府的なコンテンツが含まれることを懸念している。

中国政府は、過去10年にわたり4万人とも言われるネット監視員を動員してVPNを閉鎖してきたが、ネット民は生き残ったVPNを見つけては使用してきた。しかし、3月31日に政府は取り締まりをさらに強化し、非認可のVPNを全て閉鎖すると宣言した。

これは、中国を訪れる外国人にとって心配な動きだ。フェイスブックやGmailは、中国では一切使えない。グーグル検索やグーグルドックス(Google Docs)も規制されており、WhatsAppは使えたとしても動作が重い。海外のニュースサイトも、チベットや台湾など中国政府を不快にさせるテーマを扱うものは遮断されている。

しかし、規制が強化された後もVPNを使って検閲を回避することは可能だ。最適な方法は、中国に拠点を持つ外国企業のVPNを利用することだ。昨年、中国の工業情報化部はVPN規制の強化を発表したが、専門家によるとターゲットは外国人ではなく、中国の一般大衆だという。

中国は海外への直接投資額ランキングで米国と英国に次いで3位となっており、昨年は3万5000もの外資系企業が中国で設立された。これは2016年を上回る数だ。中国の学術機関も、海外の研究成果を調査する目的で今後もVPNの利用が認められる可能性が高い。

「過去の事例にもとづけば、今回も外資系企業の従業員と中国の学術機関に対してはVPNの利用が認められるだろう。これまでの規制は、マスマーケット向けに提供されているVPNが対象だった」と北京に本拠を置く調査会社「Marbridge Consulting」のMark Natkinは話す。

「IDC」のXue Yuによると、企業は海外サイトにアクセスする必要性を示せば、通信会社が提供するVPNへの接続が認められる可能性が高いという。例えば、中国で開催される国際的なカンファレンスの主催者であれば、地元企業であってもVPNの利用が許可される。カンファレンスに出席する外国人のゲストも同様だ。

結局はいたちごっこに

「中国で登録された企業であれば、今後もVPNを運営することができる」と在上海米国商工会議所のIT委員会で会長を務めたDanny Levinsonは話す。

VPNのレビューサイト、「Top10VPN.com」は、「3月31日の規制強化によって、数百万人の中国人ネットユーザーがグローバルなインターネットから遮断された」と述べている。

同サイトによると、中国には少なくとも7億5100万人のネットユーザーがおり、VPN利用者数も世界で最多だという。3月31日以降、一般ユーザーはネット上のマーケットプレイスやアプリからVPNに接続することができなくなった。中国のネット企業も、当局と協力して禁止されたコンテンツを遮断している。

それでも、海外のサイトにアクセスしたいユーザーは、海外で販売されているVPNを利用することができる。VPN規制は、今後もいたちごっこの様相を呈す可能性が高い。というのも、ビジネスへの影響を考慮すると非認可VPNを一気に遮断することは難しいからだ。また、我慢強く探せば閉鎖されていないVPNを見つけることができるかもしれない。

編集=上田裕資

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