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2018.04.26 11:00

イビサ島で日本酒が大人気! SAKEカクテルが導く、辰馬本家酒造の展望

辰馬健仁 辰馬本家酒造 代表取締役社長

創業356年を迎え、まさに老舗の風格を漂わせる辰馬本家酒造。35歳で代表取締役社長を引き継いだ辰馬健仁さんはその伝統にあぐらをかくことなく、数々の革新的な試みに取り組んでいるが、その目は日本の酒造業界広汎を見渡している。


兵庫県西宮市の井戸「宮水」は1840年ごろに発見された。地下3~4mから組み上げられるこの井戸水は六甲山からの流れを汲んでミネラルやリン、カリウムを豊富に含む硬水。以来2世紀に渡って、「宮水」はこのあたり一帯の酒造りだけに用いられてきた。

この「宮水」で仕込んだ酒は発酵が旺盛で、やや辛口となるそうで、「灘の男酒、伏見の女酒」(京都・伏見の酒は軟水で仕込まれる)という言葉もここから生まれた。灘とは西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の5つの郷(地域)からなり、日本酒の約30%が製造されている日本随一の酒どころである。

辰馬本家酒造は1662年(寛文2年)、徳川四代将軍家綱の時代に創業し、この「宮水」を使った酒で灘の名酒として地位を確立、1920年(大正9年)には現在に続く主要アイテム「黒松白鹿」を誕生させたという、まさに日本酒業界のリーディングカンパニーである。

「日本酒業界は景気にあまり左右されないと言われてきましたが、2006年から酒類販売の規制が緩和されたことをきっかけに、徐々にプル状態からプッシュ状態へと変化してきました。また若年層の日本酒離れも危惧すべき状況だと思います」

その過渡期に社長へ就任した辰馬健仁さんは日本酒をこれから飲む“日本酒ビギナー”に注目し、日本酒とのタッチポイントを増やすことに注力してきた。

「日本酒をもっとクールに、かっこよく消費していただきたい。廉価な飲み放題プランで出会った日本酒では楽しい経験にならないでしょう」

そのために取り組んだのは、マーケティング部門の立ち上げ。日本酒をもっと気軽に楽しめるように、と17年には「ソトノミプロジェクト」を始動させた。たとえば須磨海岸に夏季限定のポップアップバーをオープン、グランピングリゾートとのコラボ企画、また氷を入れて飲む酒「黒松白鹿ICE SAKE」の開発など、その活動は多岐に渡る。


大きめの氷に酒を注ぐ“オーバーアイス”、クラッシュアイスに酒を注ぐ“ミスト”を提案する白鹿 ICE SAKE あいす酒(720ml)各1080円

なかでも特筆すべきはクラブカルチャーの中心地として知られるイビザ島(スペイン)でのエピソードだろう。「イビザで白鹿がよく飲まれている」と聞いた辰馬社長は自らその人気ぶりを確かめようとイビザ島のナイトクラブを訪れた。「SAKE」と注文したところ、「ストレートorカクテル?」と質問されたことに目からウロコが落ちる気分だったという。

「酒はそのままで飲む、と日本人は思い込んでいますが、もっと自由な楽しみ方があっていい。私どもの企業理念に『育てる』というものがありますが、日本酒を育てるのはもちろん、市場も育てていきたいと考えております。文化や歴史は守っていくものではなくて、その時々で試行錯誤していたものを、後世から振り返ったときに結果として認められるものじゃないかな、と」


イビザ島で誕生したのは「黒松白鹿」にビアホイップをトッピングしたカクテル「イビザショット」

イビザ島での経験をもとに、この夏も「白鹿」のSAKEカクテルをユーチューブ動画などでプロモートしていく。

「私は事業を継承しましたが、その市場を継承したわけではない。次の市場、そのまた次の市場を見据えて、飲み手を『育て』ていくことが必要です」

創業356年の老舗を守り、育てる辰馬社長の目は早くも次世代のSAKEシーンを見据えている。


辰馬健仁◎1971年兵庫県西宮市生まれ。甲南大学法学部卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。1999年に家業の辰馬本家酒造に入社。2001年取締役、02年常務取締役、04年取締役副社長、06年より代表取締役社長。


辰馬本家酒造
兵庫県西宮市建石町2-10
www.hakushika.co.jp

Promoted by 辰馬本家酒造 文・編集=秋山 都 写真=吉澤健太

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