シリコンバレーのテクノロジー企業のうち、十数人またはそれ以上の「H-1B」ビザ保有者の存在をなくして生き残ってくることができた企業はない。ドナルド・トランプ大統領が就任して間もなくイスラム圏の7か国に対する入国禁止を打ち出したとき、テクノロジー企業の幹部らがそろって反対を唱えた主な理由は、そこにある。
移民に関して各社が最も関心を寄せ、最も頼りにしているのは、何より重要なH-1Bビザだ。だが、外国で働く労働者のビザ申請・取得を支援する米エンボイ・グローバルが先ごろ発表した報告書には、驚くような調査結果が示された。ベイエリアのテクノロジー各社はH-1Bビザの取得を諦めたわけではないものの、申請件数を減らしているというのだ。
新大統領の移民政策に合わせた調整と呼べばいいだろうか。高度な技術を習得した外国人労働者に頼ってきた過去の方針にもかかわらず、これらの企業の大半は外国人労働者の採用を、最も優秀な人材の獲得における最重要事項とは考えていないというのだ。
最も変化を警戒
サンフランシスコで働く移民について、エンボイの委託により調査会社ハリス・ポールが行った今回の調査では、同地域に拠点を置く企業の採用責任者など171人から得た回答を分析した。
同地の企業は現在でも、外国人労働者の雇用は業界において一般的なことだと捉えている。その一方で、今も「外国人の従業員を積極的に採用している」という同地のテクノロジー企業は、わずか8%にとどまった。関連産業が盛んなその他の地域では、同じように回答した企業の割合は24%だった。
また、最も優秀な人材の獲得における最重要事項について、現時点では外国人労働者の採用とは考えていないとするサンフランシスコのテクノロジー企業は、54%に上った。トランプ政権下でH-1Bビザの申請手続きがより煩雑になったことを理由に挙げている。
移民関連の規制の変更を受け、同地の企業は33%が外国人の雇用を減らしている。全米では、こうした方針を取っている企業は全体の26%だ。
エンボイ・グローバルが今年に入って行った別の調査では、テクノロジー企業の大半が、世界中からエンジニアを採用したいと答えていた。エンボイの最高経営責任者(CEO)は、「企業はSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の優れた才能を見つけ出すことに苦労している」と指摘するとともに、次のように述べている。
「これらの分野で優れた才能を持つ人材の需要は、供給を上回っている。米労働省は、ソフトウェア開発者の需要は2020年までに、100万人を超えると予想している」
「当社の顧客や調査の回答者らによれば、必要な人材を確保できず人材不足の問題を解消できなければ、各社はプロジェクトを延期または中止、あるいは国外に移転させることになる…ビザの取得がより困難になるなか、各社は外国人の採用について、危険な戦略を取るわけにはいかないということだ」