ビジネス

2018.04.11

オフィス街のフードトラックが示す、モビリティサービスの可能性

オフィス街の「フードトラック」


将来的には「まちづくり」にも着手したい

─今後の展開については、どう考えていますか?

柏谷:現在はフードトラックが中心ですが、今後はマッサージやネイル、マルシェ、パーソナルジムなど、サービスカテゴリーを広げていき、モビリティサービス・プラットフォームへと進化していければと思っています。

─フィットネスジムのモビリティサービスもあるんですね。

柏谷:海外の事例ではありますが、大型トラックにトレーニング機材を1、2台積んでトレーナーを1人配置し、予約はFacebookやInstagramで取るという仕組みです。

ほかにも、アメリカではモビリティ型のセレクトショップもあります。ファッションセンスのある人が自分で買い付けた服や作っている服をインスタグラムにアップして、「今日はここで販売するので来てください」と宣伝すると、人が集まるんです。

─日本だとフードトラックは割とアナログというか、昔からあるイメージですが、海外ではむしろ時代に適しているからこそモビリティサービスが増えている、と。

柏谷:ニューヨークでセレクトショップをオープンするには億単位のお金が必要ですが、インスタであれば、センスのいい個人さえいれば路上で人を呼べますから。飲食業でそれをやっているのが、TLUNCHです。

いままで固定店舗でなければできなかったサービスをどんどんモビリティ化にして、さらにどこにどんなサービスを提供するのがベストなのかをデータ最適化するんです。

自動運転が実現すれば移動も機械がやってくれるから、人はハイクオリティなサービスを提供するだけで、自動的に一番効果が上がるところでビジネスができます。そうすればサービス提供者はもっと輝けるし、お客様も手軽にサービスを受けることができます。

─モビリティサービスで1つの街ができそうですね。

柏谷:そうなんです。実はまだ公開していないのですが、新たな事業として街を丸ごとつくろうと考えています。自分がつくりたいのは、どう生きたいかで住む街が選べる社会。いま東京に住んでいる人の多くは、職場の都合などの消極的な理由から住む場所として東京を選んでいるじゃないですか。

 

でもモビリティサービスがもっと普及していけば、東京以外の場所にいろんなコンセプトの街を作れるはずだと考えているんです。

例えば、昔ゴルフ場だった私有地に1万5000人ぐらいの街をつくって、65歳以上の人が余生を暮らすのに最適化された街とか、街中の道路や建物に自由に創作できてそれを売る人とそれを買う人が住むアートの街、あるいはLGBTの人がお互いの尊重を重視した街を作ることもできますよね。

建物を低コストで作り、さらに必要なサービスはモビリティで提供すれば、まちづくりに必要なコストを最小化できます。街のハードな部分に費やすコストを減らし、その分どう生きたいかを支援するようなソフトな部分に投資することで、様々なコンセプトの街を実現していきたいです。

人が密集して賃料が高くなっているオフィス街では、飲食チェーンやコンビニ、カフェなど高い賃料を払えるプレーヤーで埋め尽くされる必然性があり、街から個性が消えてしまうんです。

一方で、いまは飲食店アルバイトを筆頭にやりたくない仕事は誰もやらなくなってきているじゃないですか。これは大量生産して大量消費するために単純作業を我慢していたいままでの資本主義が否定されているということですよね。実際、やりたくない仕事をやってもパフォーマンスは落ちるばかりですから。

その一方で、モビリティサービスであれば誰でもオーナーになれる可能性があります。みんながオーナーになって、自分の人生をかけたサービスを提供できればやる気も出るし、いいサービスを受けることもできます。みんなが個性を発揮して、いいものが溢れる。そんな街ができれば理想的ですよね。

文=野口直希 写真=小田駿一

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