ビジネス

2018.04.11

オフィス街のフードトラックが示す、モビリティサービスの可能性

オフィス街の「フードトラック」


最初の3か月は売上ゼロ。泥臭く交渉する毎日が続く

─現在、60箇所のスペースを運営されていますが、最初から順調にスペースの数は増えていったのでしょうか?

柏谷:いや、最初は大変でした。3か月経つまで、1件もスペースの契約ができなかったですからね(笑)。テレアポしても怪しい業者だと思われて、会ってもらえない……。その間、売り上げは当然ゼロでした。
 


─絶望的ですね。最初に獲得したスペースはどこだったんですか?

柏谷:三井不動産さまの本社ビルです。

─まさかの大企業。契約してもらえた要因は何だったのでしょうか?

柏谷:私たちのことを、単なるフードトラック屋ではないと思っていただけたからですかね。テクノロジーを使って、その場所に最適なご飯を提供する、アプリを提供してお客さんの体験を良くしていく、という私たちの事業、そして想いを伝えることで、将来性を買っていただけたのかな、と思います。それを契機に、一定以上の実績をあげた頃から、スペース数は爆発的に伸びていきました。

「どこで、何を売るか」もプロデュースする

─提携するフードトラックの数はいかがでしたか?

柏谷:フードトラックは順調でした。みんなフードトラックでお店を持ったけれど、売る場所がなくて困っていたので、すごく需要がありましたね。

また、自分たちは提携するフードトラックに管理ツールを提供し売上を報告してもらうほか、Slackを導入してもらい、スペースごとのチャンネルで情報交換をしてもらっています。

そうすることで、どのスペースで、どんな料理が売れているのかがわかる。フードトラックのオーナーが抱える悩みのひとつに、1日に何食くらい売れるかわからないというものがあります。特に新しく初めた場所なら尚更です。

でも、前日にお店を出していた人が「何食売れたよ」という情報を教えてくれるので、翌日の見積もりがしやすくなる。「TLUNCH」と提携しているフードトラックでは食材の廃棄や品切れによる機会損失といったことが起きないようにしています。

─フードトラックのオーナーから感謝されそうですね。

柏谷:そうですね。これまでにも場所とサービス、場所と人のマッチングサービスはありましたが、それらのサービスは基本的に、1時間5000円、1日3000円といったようにマッチングした瞬間に課金が発生する。

そのスキームに問題があると思っていませんが、マッチングの度に課金が発生するスキームだと、ひたすら場所と人だけ集めてマッチング回数を増やすことが目的になってしまう。

自分たちはその場所で、どれだけの人が幸せになり、どれだけ経済がまわったか。その成果に基づいてお金をもらう設計にしているので、売り上げの15%をもらい、そのうちの5%をビルのオーナーに支払っています。Mellowの収益は売り上げの10%というわけです。



ただのマッチングではなく、マッチングしたことで生まれる幸せの総量と経済効果を最大化させるために、あらゆる支援を行う。それが自分たちの掲げるミッションです。

─他には、どのような支援をされているんですか?

柏谷:フードトラックのデザインのプロデュースもしています。僕らが事業を始めた頃、お祭りの屋台に来るようなデザインのフードトラックが多かったんです。

都内のオフィスビルのオーナーでは、そういったデザインのフードトラックは入れたくないと思ってしまうこともある。また、料理人が質の高い料理を提供しているにもかかわらず、デザインのせいでお客さんがそのクオリティに気づかないという問題もありました。

そうした部分を地道にプロデュースしていくことで、フードトラックは美味しい料理を提供するお店として認知してもらうことができ、2016年度から2017年度にかけて、1店舗あたりの売上が144%も成長しました。

─フードトラックのオーナーとスペースをもっているビルをうまくマッチングさせつつ、その中で生まれる体験のクオリティをどんどん高めているわけですね。

柏谷:おっしゃるとおりです。僕らは現場を見て常に改善案を探すほか、安全の担保の部分のサポートもしています。例えば、食品衛生責任者や保健所の営業許可などの管理も、僕らが請け負っています。ほかには車検証、消防署への届け出など、安全に運営するためのオペレーションを仕組み化し、フードトラックの方々に落とし込んでいます。

安心安全でお客さんが毎日来ても飽きない場所をつくるためには、こうした泥くさいことをやり切れるかどうかが重要だと思います。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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