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2018.03.08 17:45

「自分を客観視する投資家」ほど長く生き残れる理由

業績の上がる銘柄に投資する「バリュー投資」で有名なウォーレン・バフェット(中央)も、伝説的なファンドマネジャー、ピーター・リンチの「当たりを手放して損を出し続けるのは、花を切り落として雑草に水をやるようなものだ」 という言葉をしばしば引用する。写真は2017年9月に行われたForbes100周年記念パーティーの席。

私は投資信託の運用の仕事をしている。
 
ファンドの運用にはどんなに慎重に運用しても、大なり小なりアクティブファンドであれば、好不調の波を受ける。それはやりながらわかる。今は非常に好調であるというのと、何をやってもうまくいかないということを。
 
運用以外でも、仕事でもスポーツでも好不調の波を受けることはあるだろう。私がどのように好不調をとらえているのかをお話ししたい。

私の仕事は運用会社なので、文字通り「運」を「用いる」仕事である。そもそも、株が上がるか、下がるかというのも自分の評価ではなく、株式に参加している無数の人たちの評価の積み重ねで決まる。売り手と買い手の無限のやりとりで株価がつくのだ。
 
長期的には多くの場合、業績と株価が連動するので、的確に業績の上がる銘柄に投資をすれば、うまくいくことが多い。もっとも過去はそうだったというだけで、今後そうなるかどうかはわからない。短期的な株価を決定するのは、ほとんどの場合が運である。そういう意味では、1日1日の株価の動きやファンドの動きというのは相当程度「運」に支配される。
 
私の力量は、長期的には東証株価指数や日経平均指数より上回るファンドの運用成績を上げることと、それが1年を通じてプラスである、ということで評価される。ライバルのファンドを上回る成果であればなおいい。
 
ひふみ投信を運用していて、年率約20%程度のリターンを上げることができた。これは過去の実績であって、今後そうなるかどうかはわからない。そして長く運用を続けていると、それでも好不調の波を受けることを痛感する。不調の時期になると負けがこむ。負けがこむとは東証株価指数や日経平均指数に対してファンドの成績が下回る日が続くこと。一度負けがこむと、しばらく負けが続く。それは市場の方向性とファンドの方向性が合っていないことによる。
 
それならば、市場の方向性にファンドを合わせればいいと思われるだろう。もちろんそうだが、小さな資金でも運用していない限り、そんなに簡単に銘柄を入れ替えることができない。さらに、非常によくあることだが、ファンドの中身を相場の方向性に合わせた瞬間に、今度は市場がまったく逆の方向を向くことがある。そうなったら、ファンドの方向性を変えることでさらに負けがこむ。経験の浅いファンドマネジャーに起きがちなことである。これを“往復ビンタ”という。方向を変えて2回やられてしまうからだ。

優秀な投資家が持つメタ認知力
 
一方で、好調のときは面白いくらいに市場に勝つ。自分を天才だと思ったりもするが、だいたいの場合は早くて数日、長くても数カ月もすれば、天才ではなく、単に運がよかっただけということに気がつく。だからこそ、ベテランのファンドマネジャーは好不調に関係なく冷静だ。
 
好調のときにはどうするか。好調のときには、なるべく勝ちを維持したいのでじっとするという考えの人が多いようだが、勝っているときは状況が見えているので、なるべく変化を早くするようにしている。もちろん、これはケースバイケースである。ただ、勝っているときはきちんと市場が見えているので、市場の変化の兆しをとらえて積極的に勝負をしにいった方がよいし、そもそも勝っていれば、多少負けてもなんとかなる。
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文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN 100人の名言」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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