赤ちゃんがよく遊びに来る会社です| 家入流ゆるふわ経営論 第3回

常日頃会社に赤ちゃんがいるCAMPFIRE。会議の様子はこんな感じです。


CAMPFIREだけじゃなく、他の企業とも一体となって動いていく必要があると思っています。今考えているのは渋谷や五反田、六本木、新宿といったベンチャーが集まるエリアでの、複数企業による合同託児所です。まだまだ構想中ですが、ひとつモデルが作れたらなと思って動き始めています。

こうして自社の利益を一部使ってでも育児サポートに力を入れていくことが、ベンチャーがすべきことなんじゃないかなと思うんです。労働人口が少なくなる今、働き手の確保は命題です。子育てがあってなかなか働けない、働ける場所がないという優秀な女性はたくさんいます。彼女たちの活躍の場を作らなければ。

もちろんセンシティブな問題が生まれる可能性もあります。あまりに「子連れ」にスポットをあてていると、自分が対象でない人にとっては、反対にストレスになってしまう可能性もあります。なかには子供を持ちたくても持つことができない人もいるかもしれない。そこは大いにケアをしなければいけないところです。

ただ本来、個人の辛さと他人が幸せであることには関係性がありません。会社としても、誰かの幸せを伸ばすことで、別の社員に辛さを押し付けるようなことはしたくはないので、全体を気遣ってあげられるような環境にしていきたいなとは思います。現時点では入社の段階で「CAMPFIREは赤ちゃんがよく遊びに来る会社です」とオープンにしているので、選択肢は用意できているかなとは思います。

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自分が「その立場」だったら…

本当は「社員」なんて一口でまとめられないくらい、ひとりひとりが個性豊かで、それぞれにバックボーンがある。赤ちゃんがいることもそのひとつですが、身体や、心の病気もそうです。そういったことにどれだけ向き合っていけるか。僕が大事にしているのは「自分がその立場になることもあり得る」ということ。これを忘れると、他者に厳しくなってしまう気がするんです。

例えば自分の目の前をおじいちゃんがヨロヨロ歩いていて、行く道を塞いでいれば、反射的に「遅いな」「邪魔だな」と思ってしまうかもしれない。だけど、たまたま今僕は健康に歩けているだけで、今日、明日、いつ事故に遭うかはわからないんです。

全ては“たまたま”。「たまたま障害を持たずに生まれてきた」「たまたま犯罪を犯していない」。どんな出来事も、我が身に起こる可能性があるということです。そうやって想像してみれば、遠かったはずの他者が、ぐっと自分に近づく気がするんです。

冒頭の議会の問題も同じことなんじゃないかと思うんです。「今、自分に赤ちゃんがいたら」と想像するだけで、視野はぐっと広がるはず。大切なのは「自分の時はそういう育て方をしなかった」というような、かつての体験に照らすのではなく、あくまで今その問題を抱えている人の立場になってみることではないでしょうか。

僕はあのニュースを見て、「赤ちゃん、スーツを着た大人に取り囲まれて怖かっただろうな」と考えていました。赤ちゃんの立場に立ってみるのも大事かもしれませんよね。ちなみにその後の緒方市議はというと、議会の控室にベビーシッターを呼び、授乳の時間のみ退席しつつ参加したそうです。まだまだ課題はあるかもしれませんが、議会側も控室を提供していますし、大きな一歩だと感じました。

困っている誰かが声をあげたなら、その声をすくいとって応援したい。行政も企業も課されている役割は同じなんじゃないかと思うんです。子供のいるオフィス、本当におすすめですよ。

連載:家入流「ゆるふわ経営論」
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文=家入一真

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