逆境育ちの方が伸びしろがある 「10年後に活躍する人」の見分け方

日本ラグビーフットボール協会 中竹竜二氏

多くの企業にとって深刻な課題である「後継者育成」。不確実な時代を自ら切り開く「10年先のリーダー」に必要な要素とは何か。

年間200人の経営者のリーダーシップ開発を手がけ「経営者のかかりつけ医」と呼ばれるプロノバ代表取締役社長の岡島悦子と、早稲田大学ラグビー蹴球部監督、ラグビーU20日本代表ヘッドコーチを歴任し、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターで、チームボックス社長としてビジネスの世界でもリーダー育成を手がける中竹竜二が対談を行った。

前回の記事では、スポーツ界とビジネス界の両分野で理想とされるリーダー像は、「フォロワーシップ」を牽引できるリーダー、「羊飼い型リーダー」と、先頭に立ってメンバーをリードするカリスマ型ではなくなっていることが指摘された。第2回で語られたのは、変化の先にある10年後を担うリーダーについてだ。

多くの企業は「10年後のリーダー」を想像できていない

中竹:コーチを育てている私としては、2019年のラグビーW杯はあまり自身の役割の対象範囲ではありません。私のミッションは、2027年大会の日本代表監督を育てること。その頃にベストな状況を作るためには、2023年大会の頃には新しい体制が見えていなければいけません。逆算すると猶予はあと6年しかないんです。

岡島:なるほど。2027年に日本代表監督やコーチになる人は、何歳くらいの年齢を想定しているのでしょうか?

中竹:年齢については、あまり特定していません。グレートコーチの中には、相当な失敗経験をしてから戻ってくる高齢な人もいるからです。圧倒的な素直さやイノベーションのための揺らぎを持っているのは、実はそういう失敗経験からのインサイトを持った人が多いこともあります。

協会の立場としては日本人コーチを推奨していますが、私はここも決めたくありません。私が作ったコーチングの仕組みで育って来た人であれば、外国人も入ってくるべきだし、一度リタイアしたけれどもう一度チャレンジしたい60代の方が戻ってくるのも全然ありですよね。

岡島:そうですよね。良い監督が、偶然見つかる、自然発生的に育つ、ということにかけるのではなく、いまから入念な“中竹メソッド”を取り込んだコーチをたくさん輩出しておく。そこに、体験的に気づきを得た老練な候補が加わり、高いレベルでの監督候補の母集団が形成されるということですよね。

中竹:はい。体が動く、という意味では、最適なのは40〜50歳ですね。40歳くらいで、現場でコーチができると熱量が違いますから、その世代の人を早く発掘したいです。

岡島:そうだとすると、いまの30代ということですね。企業でも全く同じで、実は著書『40歳が社長になる日』も20代後半〜30代の方に向けて書きました。経営幹部育成の現場で私が最も懸念しているのは、入社時にハイポテンシャルな人材が、入社10年くらいで組織に最適化しすぎてエッジを失っていることです。真のリーダーを輩出するためにも、キャリア早期に発掘しなければ手遅れになるという危機感です。

多くの企業は、実はサクセッション・プランニング(後継者育成)に苦労しています。「次の社長は自然体で輩出できる」「偶然輩出される」と思っている企業が多いようですが、現社長の圧倒的コミットメントの下、意図的戦略的に輩出しなければ無理だということがわかり始めています。

私は、年齢とリーダーシップは相関しないと思っていますが、意思決定の場数とリーダーシップは相関すると思っています。ですから、大企業の中で、意思決定の機会をもらえない若手が多いのが問題だと思います。

中竹:多くの大企業が苦しんでいますよね。 先進的な企業が、すでに戦略的次世代リーダー輩出に取り組んでいるというのは、スポーツの世界と同様な動きです。
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文=岡島悦子 写真=小田駿一

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