テクノロジー

2017.12.15 15:00

一にも二にもスピード感! WHILLの「高速PDCA」の秘密

Freedom Studio / shutterstock.com

電動車椅子に、従来の福祉機器とは違う新しい価値観をもたらした、その革新的で驚異的なスピードの開発を導く「CDO(チーフ・ディベロップメント・オフィサー)」の神髄は?


どれだけ良いアイデアを着想し、綺麗なスケッチが描けたとしても、製品化して生産していく力がなければ、ただの机上の空論でしかない。試作段階から製品化までの“山”を超えられないモノづくりベンチャーが多い中、 WHILLはアイデアの着想からわずか1年でプロトタイプを完成させ、東京モーターショーに出展。流線形の美しいフォルムを持つ、見たこともないヴィークルは注目の的となった。
 
製品開発を牽引するのが、CDOの内藤淳平。もともとソニーで車載カメラの開発を手がけていた。内藤のミッションは、日産自動車のデザイナー出身である、CEOの杉江理が描いたアイデアを形にし、顧客に製品を届けることだ。

「僕たちベンチャーには資金がない。早くつくらなければ、死んでしまうんです」
 
一にも二にも大切にしているのは「スピード感」と内藤は言う。何が良くて、何がダメか、すぐに決断し、高速でPDCAを回す。
 
例えば、WHILLの滑らかな走行性を支える、全方位タイヤ「オムニホイール」。実際にどう動くかを試すため、まずホームセンターで木材を買い、釘を打って三角形の土台を作った。この前輪にホイールを、後ろにモーターをつけて上に座り、快適に動くか、致命的なミスはないか検証。これを2日で行い、即、採用を決めた。
 
これまで開発スケジュールが遅れたことは一度もない。2014年9月の「Model A」出荷後、今年4月には3G回線を搭載した普及価格帯モデル「Model C」を発表した。

累計販売台数は1000台以上。現在、内藤は生産台数を増やすために、一年の大半は工場のある台湾で過ごし、製造委託先との協業を進める。

「僕たちは障がい者のための“手段”をつくりたいわけじゃない。移動を楽しくする乗り物をつくって世界にもっと広げていきたいんです」
 
車椅子にこだわっているわけでも、電動にこだわっているわけでもない。「歩道領域のモビリティーでナンバーワン」になることがWHILLが掲げる最終的目標だ。


内藤淳平◎1983年、愛知県豊橋市生まれ。 名古屋大学大学院工学研究科を修了後、 2008年ソニー入社、エンジニアとして車載カメラの開発に従事。09年に10人ほどの仲間とともにエンジニア団体「Sunny SideGarage(サニー・サイド・ガレージ)」を設立。現在、WHILL, Inc.最高開発責任者(CDO)兼 WHILL代表取締役を務める。

文=フォーブスジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN CxOの研究」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事