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2017.11.17 15:00

リーダーに必須のビジネス書の原点、「ローマ人の物語」

Vladimir Sazonov / shutterstock

各界のCEOが読むべき一冊をすすめる本誌の連載「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEOの宇佐美進典がビジネス書の原点だと絶賛する塩野七生の「ローマ人の物語」を紹介ー


仕事で壁にぶつかったとき、ビジネス書に答えを求める人は多いでしょう。私もそのひとり。経営者になる前から多くのビジネス書を読みあさりました。そして行きついたのが、この『ローマ人の物語』です。
 
ローマが生まれてから全盛期を迎え、衰退し、滅亡するまでを時には客観的に、時には活躍した人物の視点で描写している本書は、著者が15年という歳月をかけて書き上げた、文庫本にすると全43巻の大作です。そう聞くと読み始めるのを躊躇される方も少なからずいらっしゃるでしょう。そんな方のために、私なりのポイントをまとめておきたいと思います。
 
まず、ローマはなぜ、1000年以上にわたって同じ政治体制を維持することができたのでしょうか。その理由のひとつに、「敗者を同化し、多様性を受け入れたこと」が挙げられます。ローマ人は敗者にも市民権を与え、たとえ旧敗者の血を継いでいたとしても、高い地位につかせることを、まったく問題視しませんでした。
 
また、“変革者”といわれるカエサルは、若い世代や経験の少ない人も進んで登用し、敵であっても才能を認め、体制の中に取り込んだといわれています。200年以上続いた徳川時代の礎を築いた家康も家臣の声をよく聞いたそうですが、誰もが納得する才能あふれる人たちを積極的に用いたことで、不満分子を生み出さず、思う存分、采配を振るえたのではないでしょうか。
 
私が本書を読み始めた2004年は、VOYAGE GROUPが創業時から主力事業として進めていた「懸賞サイト」の刷新を迫られていた時期でもあり、長きにわたって栄えたローマが終焉に向かっていく様が、私の心を揺さぶりました。
 
成長過程で機能していた制度も、時代が変われば制度疲労を起こします。ローマは、国が大きくなりすぎたこともあって、人々の思想の変化に合わせることが難しくなってしまったのです。

「時代に合わせて変化できなければ、必要とはされない」
 
私は、懸賞サイトを「価格サイト」へ一新させ、その後、さらに「ポイントサイト」へと形を変えました。そうしなければ競合との戦いに巻き込まれ、思うような利益を上げることができなくなっていたでしょう。
 
よく、歴史をビジネスに重ね合わせる声を聞きますが、歴史は人がつくるもの。だからこそ、歴史が経営の生きた教科書となり、リーダーの進むべき道を指し示すバイブルに成りうるのです。
 
本書が背中を押してくれたことで、今、私は変化を楽しむことができるようになりました。この大作を読み終えるころには、きっとあなたにも「変化を楽しむ心」が生まれるはずです。勉強だと思わず、まずはページをめくってみてください。

title : ローマ人の物語
author : 塩野七生
date : 新潮文庫 第1巻 税込497円 197ページ


うさみ・しんすけ◎1972年生まれ。96年早稲田大学卒業。デロイトトーマツコンサルティングなどを経て、アクシブドットコム(現VOYAGEGROUP)を創業し、COOに就任。2002年CEOに就任。01年サイバーエージェントの連結対象子会社化後、MBOで独立。14年東証マザーズに上場。

構成=内田まさみ

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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