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2017.10.27

世界屈指のCVC牽引役が語る「成功の秘訣」

ジョン・ソモルジャイ(写真 = 小田駿一)

世界屈指のソフトウェア企業セールスフォース・ドットコムが世界で積極的にベンチャー投資をする狙いと方法論とは。

「日本は非常にワクワクさせられる存在です。年2回の来日のたびに興味深い投資先と出会えます」

セールスフォース・ドットコムは2009年にCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)「セールスフォース・ベンチャーズ」を立ち上げた後、世界14カ国でBoxやEvernote、Twilioなど180社に対して投資を行ってきた。投資先180社のうち、IPOは9社、M&Aは45社に達する。

「CBインサイト」の最新調査によると、最もアクティブな世界CVCランキングでインテルやグーグルに次ぐ3位、エンタープライズソフトウェアへの投資に前向きなVCとしても世界5位に選ばれている。冒頭の言葉は、エグゼクティブ・バイスプレジデントのジョン・ソモルジャイの日本への見方だ。 

セールスフォース・ドットコムの既存製品カテゴリーに対して、戦略的に補完関係を築けるベンチャーが投資対象になる。投資分野は、1.インテリジェンス、2.ビッグデータ、3.プロダクティビティ、4.モビリティ、5.ビジネスオペレーションと同社が呼ぶ5つである。

日本での投資は10年に始まり、クラウド一元管理サービスのチームスピリット、クラウド電話帳サービスのPhone Appli、飲食店向け予約台帳サービスのトレタなど、これまで32社へ投資している。日本で最もアクティブなCVCのひとつだ。

「製品を連携させてソリューションの幅を広げることで、顧客の満足度が向上し、投資先は継続的に受注確率を高められ、我々も売り上げが増えます。我々の製品を起点に、投資という手法で、“クラウド・エコシステム”をより大きくしていく考えです」

セールスフォース・ベンチャーズが投資先を成功へと導けるのはなぜか? その要因は、3つある。

1つめは、製品連携による商圏拡大だ。同社の投資先は、日本だけでも数万社に達するセールスフォース・ドットコムの既存顧客へリーチできる。2つめは知見共有だ。同社は創業からの18年間、クラウドエコシステムを育てる中でさまざまな失敗を経験してきており、効果的な想定問答を蓄積している。3つめは信用。売り上げ1兆円を目指す、世界最大のエンタープライズソフトウェア販売会社である同社から投資を受ける意味は大きい。

「セールスフォース・ドットコムは99年の設立当初から、就業時間の1%、株式の1%、製品の1%を用いて非営利団体を支援してきました。このような活動についても、我々は投資先と共有しており、すでにTwilioやBoxなど75社以上が参画しています。継続的に社会に変革をもたらすためには、こういったムーブメントを大きくしていくことも重要だと考えています」


ジョン・ソモルジャイ◎セールスフォース・ドットコ ム米国本社において、コーポレート・デベロップメント&セールスフォース・ベンチャーズのエグゼクティブ・バイスプレジデント。2005年より、米国、カナダ、日本、英国、フランス、ドイツ、中国、イスラエルに広がる100以上のテクノロジー企業に対して、M&Aやベンチャー投資を牽引してきた。

文=土橋克寿

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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