ビジネス

2017.06.17 10:00

視聴者の好みを「先読み」するネットフリックスの強み


収集したデータは、新しいコンテンツの開発や作品ライセンスの取得、マーケティングにも利用される。そして、ネットワーク・データは、同社が個々の加入者向けにパーソナライズされたサービスを提供するナローキャスティングを中心とするビジネスモデルを構築することを可能にしている。そのため同社には、広告収入に頼るその他のネットワークのように、大ヒット作を手に入れる必要がない。

ネットフリックスの加入者は今年4月、1億人を超えた。2013年に同社が初めてオリジナルドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の配信を開始した時から、約3倍に増えている。売上高は2013年の43億7000万ドル(約4777億円)から、2016年にはおよそ88億3000万ドルに増加した。

成長と業界への影響

ネットフリックスは、映画界でも有力な存在になっている。米経済専門局CNBCが2016年10月に伝えたところによれば、同社は2017年、コンテンツビジネスに60億ドルを投じる予定だ。ディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNに次いで2番目の規模となる。

宅配レンタルDVDの小さな会社がここまで成長するまでは、長い道のりだった。今ではネットフリックスが開発したアルゴリズムに基づくお勧め作品の選定や加入者ごとに設定される作品リスト作成の方法をまねる企業も登場している。つまり、これらは現在、デジタルメディア配信のスタンダードとなっているのだ。

さまざまなことが可能になった現代は、投資家にとって刺激的な時代だ。作品の制作者たちは従来のビジネスモデルに縛られることがない。データ解析は製作者たちに、新たなビジネスモデルを生み出すことを可能にしている。そして優れたビジネスモデルには、将来がある。

ネットフリックスのヘイスティングスCEOは2016年、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「いずれは(米映画館チェーン大手)AMCも、独自のオンデマンド・ストリーミング・サービスを提供できるようになるだろう」との考えを示した。「DVDレンタルと同様、コンテンツをただ再放送するだけの企業には長期的なビジネスが見込めないことは分かっていた」という。

ネットフリックスは、現代社会の紛れもない現実だ。そして、重要なプラットフォームでもある。

編集 = 木内涼子

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