テクノロジー

2017.06.05 08:00

排出ガスさえ電気に変える「未来の発電所」

テキサス州に建設中の発電所に立つ、ネットパワーの創業者、ロドニー・アラム。「アラム・サイクル」でCO2削減を目指す。(photograph by Michael ChadCarter)

火力発電の過程で生まれる二酸化炭素を減らす方法はないだろうか? あるベテラン技術者の数十年越しの夢が、人類の未来を変えるかもしれない。

石炭を燃料に発電する火力発電所では、大量の二酸化炭素(CO2)が排出される。このCO2を逃さずに、電力に変えようと計画している化学エンジニアがいる。米電力会社「ネットパワー」の共同創業者、ロドニー・アラム(76)である。
 
アラムは70年代、勤務先の工業用ガス会社で、そのCO2を閉じ込める方法について研究していた。理由は2つ。まずは、チャレンジ精神を掻き立てられたこと。そして、CO2による地球温暖化を防ぐこと。

困難なため、「90年代に一度、断念した」と話すアラムだが、いま、「アラム・サイクル」として実ろうとしている。
 
一般的に、火力発電所では石炭や天然ガスなどの燃料を燃やし、そこで出た蒸気で蒸気タービンを回転させて電力を発生させる。その過程でCO2も排出される。

ところが、アラム・サイクルでは「蒸気」を使わない。排出された「二酸化炭素」そのものを使って、タービンを回すのである。加圧し、取り扱い可能な温度に熱した超臨界状態のCO2を再びタービンに戻して発電する、という“循環”を開発したのだ。

同技術は、ネットパワーが東芝とテキサス州ヒューストンで建設中の発電所で導入されることが決まっている。

文=クリストファー・ヘルマン

この記事は 「Forbes JAPAN No.35 2017年6月号(2017/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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