こうした共通点は、米紙ウォールストリート・ジャーナルが掲載したマクロンのプロフィルから抜粋した次の表現に見て取れる。
・豊かな人脈を持つ非凡な人材
・地位の高い人々と交友関係がある
・伝統的な政治家の道を進まず、近道をする
・主流派の候補や、右派対左派という従来型の構図を押しのける
・長い間、アウトサイダーを自認してきた
・早くから高い地位に照準を合わせた
・慣習に逆らうことをいとわない姿勢
・118億ドルでのネスレ買収を成立させ、富を築いた
もちろんマクロンには、トランプとの大きな違いがある。まずは39歳という若さ。大学では哲学を専攻し、大臣や銀行家、大統領を輩出したフランスのエリート学校を卒業した。(オランド現大統領の下での)政権入りの経験があり、3334ページにも上る難解なフランスの労働法も理解している。
しかし両者の間には、特筆すべき共通点がもう一つある。メッセージ性だ。「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」というトランプのスローガンは野球帽やTシャツ、横断幕、ツイッターのハッシュタグ、ウェブサイトなどに使用され、彼の選挙活動の公約で最も重要なテーマとなった。
トランプは大統領に就任後、多くの公約について方向転換をしたものの、全ては米国を再び偉大にするためだとのメッセージをいまだに基盤としている。ヒラリー・クリントンの漠然としたスローガン「Stronger Together(一緒になればより強くなれる)」とは対照的だ。
マクロンのスローガンは「En Marche(前進)」だ。労働争議や経済不安、移民問題、人種間の対立、悲惨なテロ事件の続発といった問題が重くのしかかるフランスの有権者にとって、前途を示すメッセージは希望の鐘の音として心に響いたのだ。