この新ユニットがコラボするエリアは自動車とIoTに関するサービスやヒューマン・マシン・インターフェース領域、ロボティクスやパーソナルモビリティの分野だ。さらにグーグルの親会社アルファベット傘下のWaymoとも連携し同社の自動運転技術をホンダ車に搭載する道を探る。新ユニットのCEOは旧ホンダ・シリコンバレー・ラボでシニア・プログラム・ディレクターを務めていたニック・スギモトだ。
「我々はこれまで以上のスピード感とスケールでイノベーションを加速させる」とスギモトは語る。
自動車業界では近年シリコンバレーにおける投資が加速しており、トヨタが2015年にToyota Research Instituteを設置し10億ドルを投資すると発表したほか、フォードはサンフランシスコのR&Dユニットを拡大。GMも2016年に自動運転車のスタートアップであるクルーズ・オートメーション(Cruise Automation)を買収している。
ホンダに10年以上在籍するスギモトは、長年テック関連のコラボを模索する業務を担当してきた。アップルのCar PlayやグーグルのAndroid Autoとの連携を果たしたのもスギモト管轄のユニットだ。
最近ではテック・インキュベーターHonda XceleratorがVocalZoomやLeia 3Dなどのスタートアップと協力し、自動車向けの次世代型のオーディオおよびビジュアルに関する技術の開発に携わった。さらにHonda Developer Studioがアプリメーカーと協力し、米ホンダが展開するアキュラを含むホンダ車向けのアプリの開発も行っている。
ホンダR&Dイノベーションズはいずれ日本や中国、ヨーロッパなどにチームを設置するかもしれないが、当面は比較的少ない従業員数で運営していくとスギモトは語る。「人数が2倍や3倍になるとは言えないが、シリコンバレーとイスラエルで拡大していくことは確かだ」
ホンダ・シリコンバレー・ラボはテック系スタートアップと共にオープンイノベーションを推進し、特定のプロジェクトでコラボすることはあったが、新機能や新技術をいち早く安価に市場に浸透させることを目標としていたため、直接出資や独占的な開発を進めることはなかった。今後はこの方針を全世界のホンダで進めていくことになる。
「R&Dをスピードアップさせて有効活用するために、R&Dセンターにオープンイノベーションを取り入れたい」とスギモトは説明する。「我々は自動車の技術だけでなくホンダに関わる全ての側面を改善するべく、ベンチャー企業の新しい技術やイノベーションを幅広く探したいと考えている」