日本の47銀行とコンソーシアム、リップルの狙い

クリス・ラーセン (photograph by Koichiro Matuii Toru Hiraiwa)

“インターネット”と同様に社会的に大きなインパクトを与える新技術・ブロックチェーン。その旗手たちが描く「革命後の世界」の姿とは。

「国際間のお金の動きを、迅速に確実かつ低コストにしていきたい。この実現によって、インターネット黎明期のようなビジネスモデルのカンブリア爆発が起こるでしょう」

分散型金融技術を活用した、グローバル金融決済ソリューションを提供しているリップル。共同創業者のクリス・ラーセンは、国際送金の変革がなぜそれほど重要な瞬間だと捉えているのかー。

「インターネットの普及を介して“データ”における相互運用性、コンテナの発明を通じて“モノ”の相互運用性が実現しました。しかし、“お金”についてはまだ道半ばです。燃料、熱、酸素の3つが揃わなければ火が燃え盛らないのと同様に、3つの相互運用性を兼ね備えたエコシステムが実現しなければ、真のグローバリゼーションは叶いません」

銀行口座に眠っていた“お金”は、デジタル通貨という新たな価値に変わる選択肢を得て、国際金融における流動性の仕組みを変化させている。銀行は潤沢な資金を持つが、1970年代に端を発する銀行間通信ネットワークSWIFTやコルレスバンクシステムへ頼っており、最新かつ最適な環境となっているかどうか疑問が残る。

これに対して次世代決済基盤「リップルコネクト」は、各銀行が複数の中継銀行を経由せずに直接取引することで、送金コストの削減や取引時間の短縮、プロセスの可視化を実現していく。リップルは世界中の銀行との協働を進めており、日本においてはSBIホールディングスと組み、「国内外為替の一元化検討に関するコンソーシアム」を47行と共に発足した。ブロックチェーンを活用した国際送金の実証実験においては、既にみずほフィナンシャルグループやSBIホールディングスがリップルコネクトを活用している。

「銀行と協力しながらネットワークを変えていくことが、最も早く、大きなインパクトを与えられると考えています。より効率的で、より費用効果が高く、より多くの機会を顧客に提供できるように銀行をエンパワーメントしていきます。エンタープライズソフトウェアを手掛けるインフラ企業、我々はそういう存在でありたい」

その青写真は、グーグルやフェイスブック、アリババなどが登場する前─、まさにインターネット草創期を彷彿させる。「最初にインフラが整っていなければ、その後に何も実現しません。一番手を担うことが、まさに私たちの役割といえます」

そう語るラーセンだが、17年1月付でリップルのCEOを退き、会長職へと移った。その理由について、リップルのステージが変わったと述懐する。

「私の役割は、イノベーションを考え抜き、クレイジーなアイデアを得て、それほどクレイジーなように見えずに、実際の問題へ適用していくことです。リップルは既に初期段階を達成しており、次の段階では逐次的な遂行が求められますが、新CEOのブラッド・ガーリングハウスがまさにそのスキルを備えています。今でも、私はリップルに100%献身しています。リップルが持つ使命を心から愛しているのです」

クリス・ラーセン◎1960年米国生まれ。1996年E-Loan共同創業、2000年に10億ドルの企業価値まで育てあげた。06年Prosper Marketplace、12年にRippleを共同創業。17年1月より同社会長。

土橋克寿 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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