バッグには「服以上に」美意識が現れる?

4種類の素材を手作業で縫い合わせたダッフルバッグ。完成までに8時間以上を要する。ハンドルの長さが調整でき、手持ちも肩掛も可能。31×41×18cm/426,000円(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン 0120-60-1966)


小暮:ボッテガ・ヴェネタのボッテガは「工房」という意味。ヴェネト州の工房が名前の由来です。「イントレチャート」と呼ばれる短冊切りのレザーであるフェットゥーチェを丹念に編み込んだ職人の熟練技を間近で拝見したことがありますが、まさに匠の技。職人やモノづくりに敬意を払うブランドです。だから職人を育てる学校までつくった。

このパッチワークも職人が丁寧につくり、柄も複雑です。“思わせぶり”効果も大きいですが、男性自身がこの技に魅せられることも多いのでは。

森岡:ファッション感度が高いブランドですが、職人技がスタイリッシュに香るブランドでもあります。

小暮:クリエイティブ・ディレクター、トーマス・マイヤーは「ラグジュアリーの概念は何を見せるかではなく、何を隠すかにある」と言っています。さらには「自分のイニシャルだけで十分」と言い、ロゴなど一切入れていない。その潔い哲学にも惹かれますね、男性は。

森岡:ロゴのようなわかりやすいアイコンがないから、どこのバッグかすぐにはわからない。そこが“思わせぶり”なんです。しかし“佇まい”があるので、「おっ、ボッテガ・ヴェネタだ」とわかる風格を備えている。職人やデザイナーの顔が滲み出ているんです。

小暮:持つ人のスタイルを限定するのではなく、際立たせることがモットー。紳士のスタイルの基本に通じますね。いまはカジュアルな社会風潮なので、ジャケットスタイルならば、オンデューティーでも使えますね、このバッグ。

森岡:もちろんです。だから魅力的でもあり、実力もあるバッグというわけです。荷物をあまり入れないで、着こなしのアクセントとして持ってもいいですね。(笑)


森岡 弘(右)◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。株式会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ現在に至る。

小暮昌弘(左)◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。1982年、(株)婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から2007年まで『メンズクラブ』編集長。2009年よりフリーランスの編集者に。

文 = 小暮昌弘

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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