「風通し」の良い組織はツキを呼ぶ/三井化学 淡輪敏社長

三井化学の淡輪敏 代表取締役社長(写真=佐藤裕信)


シェフのように客のニーズを考えてソリューションを導く。

「困ったときは、三井化学に聞けば、いい素材や手法を提供してくれるに違いない。そんなイメージをもたれる企業を目指しているんです」と淡輪は言う。

ドローンや環境自動車を製造するベンチャー企業に軽量で強度の高い素材をつくるための技術を提供。社内に「ロボット材料事業開発室」を立ち上げ、ロボット分野への攻勢を強めている。

昨年12月には、新たに開発したウレタン素材が“緑のロボット”という組み立てロボットに採用された。人とロボットが共に働けるよう、柔らかく弾力性を究めたものだ。さらに、“人肌ゲル”と呼ばれる人肌のように柔らかい新素材の開発も進行中だ。

また、クリエイティブパートナーとして、「デザインマネジメント」で知られる田子學を迎え入れた。田子と組織横断的な「オープンラボラトリー活動」を開始。消費者にはなじみの薄かった化学素材から、「感性的な魅力」や「機能的な価値」を再発見し、社会のためにシェアしていこうという試みである。田子との共同作業も、実は社員から上がってきた企画だった。

「いまは私ごときの考えが通用する世界ではないのです。だから、若い社員がやってみたいと思うアイデアをどんどんやらせている。やってみてダメなら改める朝令暮改式です」

淡輪のデスクには、社員のアイデアで開発された樹脂配合の先進素材のプロダクトが並んでいる(写真)。クッション、皿やカップなどスタイリッシュなプロダクトだ。それを本棚から見下ろす徂徠の本。そこには、古きに学び、新しきを知る世界があった。


淡輪 敏(たんのわ・つとむ)◎1951年、福岡県生まれ。76年、早稲田大学商学部卒業後、三井東圧化学に入社。97年に三井東圧化学は三井石油化学工業と合併し、三井化学に。2012年、取締役常務執行役員、全事業の責任者として構造改革案を策定。14年4月から現職。

文=飯塚真紀子

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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