ビジネス

2017.04.11

「破壊」の安売り、もうやめませんか?

Roman Samborskyi / shutterstock.com

アジアで新規参入ブランドやスタートアップが盛り上がりを見せる中、業界全体が大きなコミュニケーション問題に直面している。

新興企業に関するニュースは、メディアや世間の興味をかきたてる。業界の問題点や時代遅れの側面を見いだした個人やグループが、面白いアプローチで改革に乗り出した──。こうしたニュースは適度な対立要素があり刺激的で、注目を集めるものだ。

だが問題は、不正確で怠惰な表現で自らの事業を説明するスタートアップがあまりに多いことだ。ほぼ全てのスタートアップが、業界や大手企業、古い慣習などを「破壊(disrupt)している」と主張する。

理由は単純明快。効果があるからだ。破壊と言えば人々の注意を引くし、メディアにもこぞって取り上げられる。

しかし、これが正しいとは限らない。そろそろ現実を直視しよう。「破壊的イノベーション」という表現の現状での使われ方は、ほぼ全てが間違っている。

ビジネス界での破壊という言葉の意味は、非常に限定されている。破壊的イノベーション理論の考案者であるクレイトン・クリステンセンはこれを、「商品やサービスが、まず市場の底辺で簡易に取り入れられることで定着し、その後急速に市場での地位を上げ、最終的に既存の競合に取って代わる」ことだと説明する。

クリステンセンがよく使う例には、パーソナルコンピューター(PC)が汎用大型コンピューターを、格安小売店がフルサービスの百貨店を破壊したことなどがある。一方で人々がよく例に挙げる配車アプリのウーバーは、実は破壊の例として不適切だ。同アプリは高級車配車サービスとしてスタートし、市場の底辺にはサービスを提供していなかった。

しかし、あまりに多くのスタートアップやマーケティング担当者、メディアが、本来は「変化」や「挑戦」などと言うべきところで「破壊」という言葉を自由気ままに使っている。

この問題は、私にとって長年悩みの種だった。新規参入企業や起業家、そして破壊的企業に特化したPR代理店の設立者として感じるのは、正しい言葉を使うことが、企業の顧客にとっても重要だということだ。
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編集=遠藤宗生

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