「2時間で1万個の口紅を売る」中国Eコマース市場の破壊力

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中国のEコマースの進化は次の3点で説明できる。モバイルの活用、ソーシャルコマースの普及、さらにエンターテインメントとの融合だ。ここでは中国で高まる新たなEコマースのトレンドを紹介してみたい。

8割以上がモバイルからの購入

中国ではEコマースの大半はモバイルから行われる。昨年の独身の日(シングルデー、11月11日)にアリババが主催した買い物フェスティバルでは、82%の消費者はモバイルから購入を行った。

それに対し、昨年のブラックフライデーにモバイルで買い物をした米国人は全体の36%に過ぎない。米国ではモバイル決済の導入の遅れや、PCベースの古いEコマースが主流であることが原因で、モバイルのEコマースの普及が遅れている。

統計ポータルのStatista のデータでは、2021年にスマートフォンユーザーは世界で21億人に達する。より多くの人々がモバイルからショッピングを楽しむようになる。

モバイル分野で中国は世界の先を行っている。スマートフォンを用いた送金や、チケットの購入、クーポンの活用、ギフトカードの配布、コンテンツ購入といったあらゆる面でモバイルの活用が進んでいる。

ソーシャルコマースの発展

中国でEコマースはWeChatのようなSNSに組み込まれている。WeChatは8億人以上が利用し、企業はその決済機能を活用して消費者にダイレクトに販売を行える。WeChatはソーシャルコマースのプラットフォームとして急速に成長し、顧客のエンゲージメントを管理するツールや、実店舗への来店を促すO2O機能も充実している。

ブランドはWeChatのアカウントを通じで顧客と交流し、セール情報等を提供し購入意欲を高める。これに対し、西側諸国ではソーシャルメディアとEコマースのプラットフォームは分断している。例をあげるなら、友人との交流はフェイスブックで行い、買い物はアマゾンということになる。

エンタメとEコマースの融合

中国で生まれた新たなEコマースの流れは「エンターテインマース(entertainmerce)」と呼ばれている。昨年のシングルデーにアリババは、傘下のTモールで8時間に及ぶライブストリーム番組を配信。「今見て、今買う」と題したファッションショーを行った。その番組で視聴者らは最新のファッション製品を、ショーの開催中に即座に購入することが出来た。

それ以来、ライブストリーム中継を通じたEコマースは急速に普及。今では300以上のプラットフォームが存在し、ユーザー数は3億人にのぼる。ソーシャルメディアで巨大なフォロワーを持つKOLと呼ばれる人々は、番組のホストを務めることで莫大な収入を得ている。

ここには有名ブランドも参入し、ロレアル傘下のメイベリンは自社のストリーム番組で、新アンバサダーにモデルのアンジェラベイビーを起用したことを発表。その後、2時間で1万個以上の口紅が売れたという。

西側諸国でもストリームを商品の告知に用いることは多いがそこから直接、購入を行う機能は無く、この点でも中国は先を行っている。

最大の特徴はモバイルコマースとSNS、そしてエンタメが一つのプラットフォームに統合されている点だ。この分野の成長は中国のミレニアル世代が牽引しており、モバイルと親和性の高い若い中国人の購入意欲をかきたてている。

[訂正]本記事内で「2時間で10万個以上の口紅が売れたという。」と記載されていた部分を「2時間で1万個以上の口紅が売れたという。」に訂正いたしました。

編集=上田裕資

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