アップルはiPhoneのグラフィックや映像の処理に採用してきたイマジネーションの技術の使用を向こう1年3か月〜2年以内に終了すると発表。これを受け、イマジネーションの株価は4月3日の取引で一時70%以上急落した。
アップルの今回の決定は、テクノロジー企業同士の関係がいかに簡単に崩れ得るかを示している。一方が“世界で最も価値の高い企業”のアップルであれば、他方の株価への影響は「壊滅的」にもなり得る。
ノーザン・トラスト・セキュリティーズのアナリスト、ニール・キャンプリングはアップルのこの決定を受け、「イマジネーションと同社の投資家にとっては、ブラック・スワン(市場が事前にほぼ全く予想しておらず、大きな衝撃をもたらす出来事)だったといえる」「イマジネーションは投資不適格の企業になった」と述べている。
危険なビジネスモデル
イマジネーションはこれまで、アップルのサプライヤーとして多くの恩恵を受けてきた。スマートフォンの販売数が増加する中でアップルやインテルなどのハイテク企業から多額の投資を受け、同社の株価は2009年以降、400%上昇した。アップルはイマジネーションの最高執行責任者(COO)をはじめ数多くの従業員を引き抜き、一時はイマジネーション買収を計画しているとも伝えられた。
そして、イマジネーションは現在、最大の顧客であり最大の投資家でもあるアップルから(アップルは同社株の8%を保有)、売上高の半分近くを得ている。イマジネーションの時価総額は3月下旬におよそ10億ドル(約1100億円)だったものの、4月3日には約3億6000万ドルにまで急減した。
英投資銀行インベステックのアナリストは、「イマジネーションのビジネスモデルが持つ最大のリスクが明確に認識されることになった」と指摘。今後のアップルとの関係が明らかになるまで、同社との契約締結を延期する企業が出てくる可能性もあるとの見方を示した。
イマジネーションは、自動運転車やVR(バーチャルリアリティ)ヘッドセットといった新技術に使用される半導体の提供による事業の多角化を図っている。
法的措置を検討か
イマジネーションは発表文の中で、アップルは自ら「自社製品を管理するため」、独自のグラフィック処理技術を開発する方針だと説明した。一方、アップルがイマジネーションの取得した特許や知的財産権、機密情報を侵害することなく関連技術を開発できるかどうかについては、懐疑的な見方を示している。つまり、問題が法廷闘争に発展する可能性もあることを示唆した格好だ。
アップルとの間では現在、将来のライセンス権やロイヤルティー契約に関する内容について、協議中だという。
自社をアップルとの関係によって危険にさらしている企業は、イマジネーションだけではない。オーディオ半導体のシーラス・ロジック(Cirrus Logic)、半導体装置のインベンセンス(InvenSense)、アナログ半導体のスカイワークス(SkyWorks)は、売上高の3分の2をアップルから得ている。そして、各社の株価の値動きは、常にアップル株に追随する。
イマジネーションとの契約終了の件に関して、アップルからのコメントは得られていない。