「次世代のインテル」NVIDIAに学ぶ、飛躍的進化への道筋

ジェンスン・フアン NVIDIA創業者兼CEO


とはいえ、エヌビディアの強みは、この領域でのスタートが最も早かったことだ。しかし気を緩めることはできない。本当の戦いはこれからだと言われているからだ。テクノロジーアナリストのジョン・ペディーはこう話す。「エヌビディアは勝てる位置にいるとは思いますし、確率的にはエヌビディアが勝つのではないかとは思います。でも、まだ断言はできませんね。あまりに多くの会社が注目している領域ですからね」。

「未来の社会の中心は間違いなくAIコンピューティングです」とフアンは断言する。「エヌビディアのプラットフォームを、ベストな形で進化させ続けられれば、今後も売り上げを増やし続けられると考えています」。

そう語るファンの目線は、自社の革新的な製品はもちろん、それ以外にも向けられている。だからこそ、エヌビディアは強く、変革できるのだ。

エヌビディアは、米フォーブス誌が昨年発表した米「コーポレートシチズン(企業市民)ランキング」で半導体業界最高位にランクインした。

調査対象の10項目中、従業員の給与、福利厚生、製品特性、環境への配慮の4項目で、平均を大幅に上回る高い評価を得ている。シリコンバレーのIT系ワーカーに人気の匿名職場評価サイト「Glassdoor」でも、エヌビディアは高く評価されている。長い休暇、フレキシブルな労働時間、ストレスマネジメントのプログラムといった、従業員を大切にする数々の制度が人気を博し、高い点数がついている。

「企業文化は、コンピュータでいえばOS(基本ソフト)です。会社をつくる時、何かひとつ重要なことを挙げるとしたらそれは間違いなく企業文化です」

フアンは常に従業員のことを気にかけており、ダイバーシティ(多様性)に欠くと言われているIT業界にありながら、重要なポジションに女性やマイノリティー人材を増やすプログラムを正式に実施している。15年、ダイバーシティに関する会議でスピーチをした後には、女性社員を集めて「昇進する際に何が課題となっているか」と聞き出した。大きな問題のひとつが育児休暇だとわかると、すぐ改善に乗り出し、出産後22週間の完全有給休暇の取得、復職への過渡期としてさらに8週間の柔軟な就業を可能にした。

またフアンは、従業員がエヌビディアの取り組む事業に喜びを感じられるよう努力している。ディープラーニング領域への進出も、従業員を大いに活性化したことは想像できるだろう。

フアンは「仕事は社会への貢献と結びついている必要があると思っています」と言う。「それも、SF小説級の規模でなければいけないと思っています。たとえば、癌の根治を我が社の力で前倒しして実現できるようにしたい。素晴らしいことだと思いませんか?」。

自動運転を筆頭に「AIの黒子役」として世界的革命の主役となる─。フアン、そしてエヌビディアの進化は、これからさらに加速していく。


ジェンスン・フアン◎NVIDIA共同創業者兼CEO。1963年、台湾生まれ。LSIロジック、アドバンスト・マイクロ・デバイセズを経て、93年にNVIDIAを創業。99年にグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を開発すると、メーカー各社がタブレット型PCやノートパソコンに搭載。同社を一躍、世界的な半導体メーカーへと成長させた。オレゴン州立大学で電気工学理学士号、スタンフォード大学で電気工学修士号を取得している。

NVIDIA◎1993年創業の半導体メーカー。画像処理や演算処理を高速化するGeForceやQuadroといったGPUを開発。デジタル革命を牽引してきた。近年は、培ってきたGPUディープラーニングをもとに、AI(人工知能)の分野に進出している。

翻訳=徳田令子(アシーマ)、編集=飛松紅葉

この記事は 「Forbes JAPAN No.33 2017年4月号(2017/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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