同社は2016年秋にも、自動運転式の電動ショッピングカートの特許を出願している。利用者の買い物リストにある商品を見つけてカートに入れて運び、その後は通路に残って邪魔にならないよう、自動的に所定の場所に戻るというものだ。
従業員150万人余りを擁し、世界第15位の規模を持つ上場企業のウォルマートは、年間売上高およそ4820億ドル(約53兆6500億円)。ドローンの導入は、ロボットなどに置き換えることで店舗の従業員数を減らそうとする同社の方針を示すものといえるかもしれない。ウォルマートは既に、自動化によって事務管理部門の仕事を削減している。
大幅な店舗改装が必須
だが、ウォルマートがドローン・システムを導入するには、現在の店舗の内装を大幅に変える必要がある。ドローンが店内の開口部を飛行して通過し、商品の保管エリアにアクセスできるようにするためだ。また、一元化されたコンピューターシステムが個々のドローンを管理し、商品を移送中に別のドローンと衝突することがないようにする必要もある。つまり、航空管制塔のような設備が必要だということだ。
さらに、ドローンの故障に備えてオンサイトの修理エリアも必要となるだろう。世界各地にある1万1695の店舗から故障したドローンを別の場所に送って修理するのでは、コストがかかりすぎる。
ただ、特許の出願書類にはドローンが機能する仕組みを示す図が添付されているものの、ドローンの使用を可能にするために店舗をどのように改装するかについては、何も示されていない。ウォルマートがドローンを使ったサービスを全店舗に導入する考えであれば、同社は小売モデル全体を変えなくてはならないはずだ。さらに、新たなシステムを稼働させるためには、相当の広さがある専用のスペースを確保する必要がある。
運用試験を開始
3月下旬にラスベガスで開催された小売と電子商取引に関するイベント「ショップトーク(Shoptalk)」に出席した同社eコマース事業担当CEOのマーク・ロアは、関連テクノロジーによるスタートアップの起業を支援するコンセプトストア、「ストア No. 8」を立ち上げ、既に新たな店舗レイアウトとドローンによる商品のデリバリーの試験を開始したことを明らかにした。
だが、コンセプトストアはウォルマートの中核事業とは切り離されたものであり、そこで行われる試験から、同社がすぐにも恩恵を受けると期待することはできないだろう。
一方、もう一つの小売大手アマゾンは、ウォルマートやコストコなど実店舗を持つ競合各社から世界最大規模のブランドの売り上げを奪い取ろうとしている。既にナイキなど一部のブランドは、実店舗ではなくアマゾンを通じ、消費者に直接販売する形態を試験導入した。
アマゾンの利用者は世界で3億人を超え、さらに増加している(ウォルマートは約2億6000万人)。ウォルマートは店舗のレイアウトも業務形態も大幅に変えなければ、太刀打ちはできないかもしれない。