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2017.04.27

「継がせる悩み」から親を解放しよう

大山敬義(日本M&Aセンター 常務取締役 総合企画本部長)

空前の事業承継M&Aブームの背景にあるのは、地方の中小企業を中心にした後継者難だ。「家業は親族が継ぐべき」という考え方が根強く残る一方で、肝心の継ぐ側の人生もある。継がせる側も、家業を次世代に背負わせるべきかで逡巡する。自身が家業の事業承継に直面した経験を持つ日本M&Aセンターの大山敬義氏に、次世代側の心構えを伺った。

私が家業を継がなかった理由

私の実家は、祖父の代から小さな建設業を営んできました。実は私は家業を継ぎませんでした。それは自分の父親を見て、後継ぎになるには相当の覚悟が必要であることを知っていたからです。中小企業の経営者は、自分から仕事を辞めたいと思っても、歴史もある家業ですから簡単には辞められません。それに、借金に対する個人保証もしているから、血のつながりも何もない他人に社長の座を譲るわけにはいかない。結果、自分の子供に社長を継いでもらうしかないという中小企業経営者は少なくありません。

また一方で世の中的にも、特に中小企業においては、子供が経営を継ぐものだというプレッシャーがあります。今はこの手の認識は全国的に薄らぎましたが、少なくとも私が父親から家業を引き継ぐことを打診された時は、そのような雰囲気がありました。つまり、後継者とみなされている長男の意思とは全く関係なく、親が子供に家業を継がせようとするから、多くの中小企業経営者が後継者難という現実に直面してしまうのです。

正直なところを言えば、私は家業を自分の一生の仕事にしたいとは全く思っていませんでした。内容もさることながら、自分自身で納得していないのにもかかわらず周りからの圧力で引き継がざるを得なくなる状況は、受け容れ難かったのです。

実際、親が創った会社を引き継いだら、後継者である子供は、非常に厳しい状況に直面することになります。私は、人生における悩みの半分は人間関係によるものだと考えています。特に後継社長ともなれば、普通の人には想像もできないような厳しい人間関係の問題に直面します。何しろ、親の後継ぎとして社長に就任した途端、周りの社員からは「親の七光」というレッテルを貼られてしまいますし、会社には先代に仕えた大番頭がいたりします。そのような人に、社長を継いだばかりの二代目経営者がどうやって命令を下せと言うのでしょうか。

先代は、自分にとって居心地が良い空間をこれまでの歴史の中で築きあげています。部下は皆、先代社長の言うことならば何でも聞くでしょう。でも、後継社長の言うことを同様に聞くとは限りません。逆に、諫められることの方が最初は多いでしょう。当然、どんどん居心地の悪い空間になっていくのです。その結果、後継社長がやってしまいがちなことは次のいずれかです。友達などとゴルフなどに興じた挙げ句、会社を傾かせてしまうか、先代に仕えていた腹心を全員、粛清するか。どちらにしても、後継社長は、会社経営の前に人間関係の構築で並々ならぬ苦労をします。

もうひとつ言うなら、子供は大学時代を東京などの大都市圏で過ごし、そこで就職、結婚までしているケースがたくさんあります。生活基盤が既にできあがっているのに、その全てを捨ててまで、自分の身を針のむしろに置こうなどとは思わないはずです。

とはいえ、時代は徐々に変わってきました。今では、親の家業を継がない子供も決して珍しくありません。前述のように私自身も家業を継がずに今の仕事をしています。どうすれば実家の後継者難に、的確なソリューションを提供できるのか。その問題に悩む次世代へ、日本M&Aセンターは、ひとつの提言をしていきたいと考えています。

M&Aを通じて見た事業承継の世界

日本M&Aセンターは、税理士や公認会計士を中心に1991年に設立されました。実は当時から、オーナー経営者の一部では、子供への相続対策を行ったものの後継者になってもらえず、そのまま廃業せざるを得なくなったケースが散見されました。この時、税理士の間では、このままでは将来お客様がいなくなるのではないかという危機感が高まったのです。そこで、互助会的な組織をつくろうという動きが広まり、設立されたのが日本M&Aセンターです。

後継者難にともなう廃業の増加は、税金対策では解決策にならず、何か他の方法で廃業リスクから中小企業を存続させるための手立てが求められました。その方法のひとつとして浮かび上がったのが、「第三者への事
業承継(=M&A)」だったのです。

第三者への事業承継とは、親から子供への事業承継ではなく、全く血縁関係のない他の企業に株式を譲渡し、その子会社になるというものです。その相手を探すのが、日本M&Aセンターの主業務です。

私は日本M&Aセンターの創業時からのメンバーとして、M&Aを企業同士の結婚と捉え、これまで数多くの企業を結婚させてきました。我々は、言うなれば企業を結婚させる仲人のような存在だと考えています。

こうしてさまざまなM&Aに携わる中で、実は私自身の親と同じ悩みを抱えている経営者が大勢いらっしゃることに気づきました。そしてこの人数は今後、さらに増大していく可能性があります。2015年の経営者年齢分布のピークは66歳です。実は今から20年前には、この年齢が47歳でした※。つまり、後継者にうまく経営をバトンタッチできないまま、今も経営に携わっている社長が大勢いるということです。社長の高齢化が進んでいるのに、次の代がいないから、社長を続けざるを得ない。社長は自分の健康問題を抱えながら仕事を続けているわけですが、このままだとある日突然、社長が倒れる事態もあり得ます。そうなると、事業承継という重要かつ最後の大仕事を残したまま、会社の経営自体が危うくなる恐れがあります。
※中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会」(第1回)より

「継がせる悩み」から親を解放しよう

私自身もそうでしたが、家業を営む家庭に生まれた子供なら、親に「継がせるべきかどうか」で悩ませるべきではないと考えています。高度経済成長期だった頃と違い、子供だからという理由だけで継げる時代は終わりました。それが明確である以上、子供も親から引き継ぐことを求められた時には、はっきりと親に対してどのような選択肢があるかを示し、自身も親も判断するべきでしょう。まず子供の判断を聞かないと、他の選択肢を検討する第一歩を踏み出せないのが、これまで見てきた親側の現実です。

ちなみに私の父は、亡くなる直前まで自分が祖父の仕事を引き継いだことを後悔していました。ただ、自分自身が継がないからといって、親が育んできた事業を潰すのは、あまりにももったいないし、従業員がいれば、彼らの生活をどうするかの問題もあります。父の時代は、自分が継ぐほか、事業存続の方法はありませんでした。

しかし、今は違います。M&Aであれば、事業はシナジー効果により発展し、従業員の雇用も守られます。子供は自分の好きな仕事を続け、相続時は現金で相続できます。最近では、家業を継ぐかどうかの状態にある次世代の方々から、実家の承継問題についてご相談いただくケースも増えています。親に選択肢を示し、自分と家族の将来を全員が満足いくものにしようと努力されており、非常に先見性のある方々だと思います。親世代もそうですが、むしろ次世代の方々に、自身が継ぐ以外の選択肢もあわせて検討できるように、事業承継の解決策を多く知っておいていただきたいと思います。


[オーナー社長が抱えるさまざまな問題、悩みが解決する一冊]

社長・家族・社員が幸せになる「中小企業M&A成功の秘訣」をマンガで解説した大山氏の著書『まんがでわかるオーナー社長のM&A』(すばる舎)。6代続いた酒造を舞台に、「結婚」と「承継」の狭間で揺れる主人公がM&Aに活路を見出す物語だ。事業承継、後継者不在、相続問題、個人保証といったオーナー社長が抱える問題をわかりやすく解説した一冊。

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大山敬義(おおやま・たかよし)◎立教大学社会学部卒業。1991年、日本M&Aセンターの設立に参画し、同社初のM&Aコンサルタントに。入社以来100件以上のM&A案件を成約。実家の家業(建設業)が倒産した経験から、M&Aでの中小企業の存続に対する情熱は人一倍強い。長年の経験にもとづくM&Aに関する知見を活かし、中小企業M&Aの実態を広く伝えるための普及・著作活動に積極的で、年間講演数は100回を超える。Newspicksのpropickerとしても有名。著書に『まんがでわかるオーナー社長のM&A』『社長!あなたの会社、じつは......高く売れるんです!!』(ともにすばる舎)。

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「失敗しない事業継承の選択」特集ページ

Promoted by 日本M&Aセンター text by Masamitsu Suzuki photograph by Masaya Kakegawa edit by Kou Shimura

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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