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2017.03.30

「あれ、NHKいなくていいのかも?」 一億総カメラマン時代の番組作り

NHKが新たに立ち上げたプロジェクト「東京ミラクルシティ」

のっけから他局の話で恐縮ですが…逃げ恥の「恋ダンス」、めちゃめちゃ流行りましたよね。みんなが自由に歌って、踊って、YouTubeにアップして。羨ましすぎるほどの社会現象になっていました。

恋ダンスのような、いわゆる“ユーザー参加型”のコンテンツは、ここ数年加速度的に増えています。ピコ太郎の「PPAP」もそう、ちょっと前になりますがAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」もそう。僕らNHKが作った「プロフェッショナルアプリ」もそうです。

で、ちょっと思ったんです。もっとこの流れを推し進めてみたらどうなるんだろうって。で、やってみることにしました。ユーザー参加型を発展させた、“ユーザー主役型”のプロジェクト。その名も「東京ミラクルシティ」です。

このプロジェクトは、3月22日に特別サイトを立ち上げたばかり、生まれたてほやほやのプロジェクトです。プロジェクトの主体は、NHKスペシャルチーム。目的は、2020年に向けて大きな変貌をとげる東京の街や人々の営みを、さまざまな角度から記録して、東京に関する“映像の百科事典”を作っちゃおうというもの。なんともNHKらしい超でっかいお題目ですが、その仕掛けがこれまでのNHKとは一味違います。

東京を記録する主役はNHKではなく、ユーザーのみなさんです。撮影機材もNHKの大きなカメラではなく、ユーザーのみなさんが持っているスマホです。みなさんのスマホで東京を撮影し、投稿してもらって、映像の百科事典を作りあげていきます。

しかし。この手のことって、言うは易く行うは難しなんです。僕がユーザーなら、「なんで協力しなきゃなんないの?」の一言で終わりです。でも、過去に成功事例がないわけじゃない。

たとえば、2011年に発表された「LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語」。YouTubeと巨匠リドリー・スコット監督のプロダクションが制作したドキュメンタリー映画です。140か国から寄せられた8万本、4500時間に及ぶ、2020年7月24日に撮られた映像を、1時間半ほどの映画にしました。

この例をモデルに、「東京ミラクルシティ」もプロジェクト設計してみることにしました。国内外で活躍するクリエイターを監督に据え、あるテーマに沿って映像の撮影と投稿を呼びかける。

ここまでは、LIFE IN A DAYと同じです。っていうかパクリです。すいません。でも、今回僕たちは、ユーザーが簡単に撮影・投稿ができるカメラアプリを開発することにしました。そして、このアプリの最大の特徴は、監督の意思をリアルタイムに反映させられること。

たとえば「働くオジサンを撮って欲しいな」と監督が思ったら、ユーザーのスマホにプッシュ通知で指示を送り、ユーザーは監督の指示通りの映像を次々に撮影・投稿する。アプリを通して巨大な“ロケクルー”が生まれ、作品を作りながら東京に関する様々な動画素材が集まってくる仕掛けです。

日本のスマホ普及台数は5000万台を超えていますので、理論上は5000万カメでのロケが可能になるという、映像の作り手としても夢膨らむプロジェクトになりました。

しかし、夢を現実にするのはいつだって大変です。まず、アプリの市場リリースには大きな課題がありました。構想としては分かるが、LIFE IN A DAYのように多くの動画が本当に集まるのか誰一人読み切れないのです。そんなアプリを世に出していいのだろうか? ううむ、、、さっそく理想と現実の壁にぶち当たるプロジェクトチーム。でも、諦めたらそこで試合終了です。
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文=小国士朗

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