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2017.03.27

世界最大の起業家支援団体「エンデバー」の全貌

マレーシア・クアラルンプールで開催された第69回のエンデバー国際起業家選考会の様子

世界規模に広がる、新しい起業家エコシステムに注目が集まっている。それは創立20年の歴史を持つ米国NPO「Endeavor(エンデバー)」だ。

「持続的な経済成長は市場にインパクトを与える起業家によって支えられている」。

世界30拠点に活動拠点を構え、世界各地の起業家1400人以上、世界中のメンター3000人をつなぐ、世界最大の起業家支援コミュニティ「エンデバー」。1997年に設立された20年の歴史ある非営利団体で、そのグローバルボードメンバーを務めるリンクトイン創業者であり、著名ベンチャー投資家のリード・ホフマンが繰り返す言葉だ。

同団体は、「世界中に大きな影響を与える起業ムーブメントを牽引する」ことをミッションとし、起業家に対してメンターや投資家、大学をはじめとしたネットワーク提供の支援を通じて、世界進出をはじめとした事業拡大と雇用拡大を目指している。現在、エンデバーが選出した1400人の「エンデバー・アントレプレナー」は、総計60万人の雇用を世界各国で生み、81億6000ドル(2015年度)の収益を上げているなど、世界規模で“新たな起業家エコシステム”をつくり上げている。

その「エンデバー・アントレプレナー」を選ぶ、第69回の国際起業家選考会が2月20日から23日にかけて、マレーシア・クアラルンプールで開催された。アメリカ、ブラジル、ペルー、南アフリカ、ブルガリア、インドネシア、フィリピン、マレーシアをはじめ、世界15カ国から起業家とその審査を行うパネリストが集った。

日本からも起業家として、パーソナルモビリティベンチャー・WHILL創業者の杉江理、パネリストとして、Mistletoe社長兼CEOの孫泰蔵が参加した。

多彩なグローバル・ネットワークが特徴

「(仏のドローンベンチャー)パロット社のようになるのか。お前たちには時間がない。市場をドミナント(支配)しろ」

WHILL杉江が国際選考会でのパネリストとの面接で最も印象を受けた言葉。エンデバー・マレーシアのチェアマンであり、マレーシア通信大手タイム・ドットコムCEOのアフザル・アブドゥル・ラヒムからの忠告だ。

WHILL社のパーソナルモビリティ「WHILLModel M」は17年1月、世界最大の家電見本市「CES」で、「CES 2017 Innovation Awards」を受賞。アブゾールは、世界的に注目を浴びたことにより、競合他社が質を落として半額で販売する可能性について言及。商用ドローン分野において低価格化で業界を席巻した中国DJI社とそれにともない減速したパロット社を引き合いに出しながら、販売力強化の必要性を指摘したものだ。

「一強ではない自動車業界の事例を説明して最終的には納得してもらったが、パネリストからの質問やコメントが日本では受けたことがない厳しいものだった」(杉江)。

エンデバーの国際選考会では、起業家は2人のパネリストに対して、みっちり1時間の面接を3回、計6人と3時間行う。エンデバー関係者曰く、「審査もメンタリングの一環」であり、本人のバックグラウンドや戦略、財務などあらゆることについて厳しく質問し、合否にとどまらず、的確な指摘や忠告を通して起業家支援につなげていく。

杉江を審査したパネリストは、前述のアフザルの他、グーグル・バイスプレジデントで、グーグルX「プロジェクトLoon」責任者としても知られるマイク・キャシディをはじめ、サウジアラビアのコンサルティングファームであるアルタマミ・エグゼクティブコンサルタントのアブドゥルアズィーズ・アルタマミ、アメリカのベンチャーキャピタル(VC)ユニティス・インパクト共同創業者のボー・ザイル、ベイン・インドネシア・パートナーのフローリアン・ホッペ、シリコンバレーの法律事務所であるガンダーソン・デットマーのシンガポール・パートナーであるフェリッシュ・パテール―という国籍はもちろん経歴、専門分野も様々な6人が務めた。
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文=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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