凄いスタートアップ、メルカリの「働き方」はここが違う!

メルカリ取締役、小泉文明(写真=ヤン・ブース)

「ルールを増やすと、つまらない会社になってしまう。ずっとそう言い続けてきた」

組織の設計思想として、「性善説」を掲げるメルカリ。取締役の小泉文明は、働き方の自由を縛るルールをなるべく作らずに、組織を運営することを強く意識する。社員への情報のオープン化も、そうした理念を反映した施策の一つ。給与やストックオプションといった一部の情報を除けば、Slackや社内Wiki内に蓄積された情報には誰でも、いつでもアクセスが可能だ。

「情報が必要かどうかは、情報を手に入れるまで欲しい本人すらも分からない。ならば、社員にすべて任せるのが得策。情報に限らず、社員にいろんな選択肢をできるだけ与えるようにしている」

ルールで縛らない代わりに、バリューで社員の働き方を方向づける。メルカリは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」の3つを、バリューとして設定する。

「バリューを浸透させることで、会社として『正しい働き方』を提示している。もし、提示ができていなければ、社員はどんな働き方をすれば評価されるのか不安になる。結果、社内の“イケてる先輩”を真似る働き方が主流になってしまう」

例えば、ロールモデルとされる社員が、長時間労働で成果を上げるハードワーカーなら、自然と周りの社員の労働時間も延びる。方針のない、ロールモデル任せの働き方の管理では、会社側からのコントロールは難しいという。

「もちろん、働き方の理念があったとしても、社員は実際に働いている同僚や先輩の姿から学ぶケースが多い。だからこそ、バリューを設定した上で、そのバリューを体現している社員を経営側がしっかりと評価し、働き方を方向づけるようにしている」

メルカリでは、社内での不必要な報告、パワーポイントでの会議用資料作成といった「内向きの仕事」を徹底的に削減。その結果、「メルカリに転職して早く帰れるようになり、肉体的にも精神的にも健康になった」と中途入社の社員が口を揃えるほど、全社員の帰宅時間は早く、時間外労働は少ない。

フローの情報のやり取りをするSlack、仕様書や引き継ぎ資料といったストックの情報を蓄積する社内Wikiサービス「Crowi」を駆使した「テキストベースの社内コミュニケーション」の確立により、リモートでも仕事ができるため、雪の日に無理をして出社する必要はない。それでも、平常時は「オフィスに集まって働くこと」にこだわるメルカリ。その狙いは、密なコミュニケーションによる「空気の共有」にある。

「突破しなければいけない高い壁がある時、時間や感情のズレがあると、チームをドライブさせられない。毎日顔を合わせていれば、個人のパフォーマンスも把握しやすい。深刻な問題が発生した時、『これはまずい』という危機感をチーム全体が肌感覚で共有して、クイックに軌道修正できる環境があってはじめて、私たちのような立ち上げ時期のスタートアップは、グローバルで勝つことを目指せる」

リモートでも、シェアオフィスでも「働くことはできる」。しかし、「できる」と「やる」は大きく違う。メルカリ躍進の背景には、優秀な人材の自律性を重んじる企業文化と、密な対面コミュニケーションでの連携という“メルカリ流の働き方”があった。

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メルカリ◎スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運営を行う。創業は2013年2月。日米合算6,000万ダウンロード、国内月間の流通額は100億円に達する日本最大のフリマアプリ。スマホを使ったC2Cによる新たな消費スタイルを確立。配送会社と配送サービスを提携するなど、ユーザーに売買の手軽さを提供している。

小泉文明◎メルカリ取締役。早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2007年よりミクシィに参画。取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。12年の退任後、複数のスタートアップ支援を経て、13年12月メルカリに参画。14年3月より、現職。


文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.34 2017年5月号(2017/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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