Siriは2010年にアップルに買収された後、2012年に共同創業者のDag Kittlaus、Adam Cheyer、Chris Brighamが会社を去った。彼らは、幅広いアプリケーションとより深く連携できるAIアシスタントを開発するためにVivを創業した。Bixbyは、そうした彼らの理念に基づいて開発されたという。
「Bixbyはアプリケーションのほぼ全てのタスクをサポートすることができる」とサムスンのR&D責任者であるInjong Rheeはブログで述べている。詳細な機能は不明だが現行の音声アシスタントである「S Voice」よりも高性能であることは間違いない。S Voiceは、時間や天気を知らせたり、カレンダーに予定を入力することができるが、機能においてはグーグルナウ(Google Now)に軍配が上がっていた。
サムスンによるとBixbyは高い自然言語処理能力を備えており、特定のコマンドを学習させる必要がないという。同社はユーザーに過大な期待を抱かせないためか「人間と機械が情報のやり取りを行うHMI(ヒューマンマシンインターフェース)の実現には時間を要する」とブログで述べている。
グーグルとの「契約」が足かせに
しかし、一部のアナリストは、S8のユーザーが主に使うのはグーグルアシスタント(Google Assistant)になり、Bixbyは脇役程度のポジションになると予測している。Radio Free Mobile創設者のアナリスト、Richard Windsorもその一人だ。「Bixbyの性能がグーグルアシスタントを上回ることは困難だ。AIの性能を高めるには大量のデータを蓄積する必要があるが、Vivは2012年の設立以来、実際のユーザーのデータをまだ一つも入手していない。グーグルは、20年来データを分析しており、そのボリュームは競合他社を圧倒している」とWindsorは話す。
Windsorによると、2014年にサムスンとグーグルは特定のデジタルサービスにおいて競合しないという契約を締結しており、これがサムスンにとって足かせになる可能性が高いという。「この契約があるため、グーグルアシスタントはホームボタンから起動できるのに対し、Bixby用のボタンは端末の側面に追いやられたのだろう」と彼は分析する。
Windsorはまた、グーグルのモバイル検索の20%が音声で行われており、ユーザーの多くがホームボタンを押してグーグルアシスタントを起動することに慣れていることもBixbyにとっては不利になると指摘する。それでも、BixbyがS8ユーザーから高い評価を得ることができれば、今後テレビやスピーカー、冷蔵庫といったサムスンの家電製品に搭載される可能性もある。
「Bixbyが家電製品にも搭載されれば、サムスンにとっては消費者に幅広い製品を売り込むチャンスになる。全てはBixbyの性能次第だ」とWindsorは話す。