従業員の「精神的健康」について企業が取るべき7つの対応

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心理療法士である筆者はしばしば、従業員の精神的健康の促進に関する企業の態度を、患者たちの言葉から感じ取る。「ワーカホリック」を称賛する企業、リーダーが人を罵倒するような企業などには、精神的健康に問題を抱え、治療が必要な従業員が複数いる。

心理療法士たちは、従業員の精神的な健康と職場環境との明確な関連性、そしてそのパターンに気付いている。

「精神的健康」を重視すべき理由

企業トップの大半は、従業員の精神的な健康の問題を自社とは全く関りのないことだと考えている。しかし、そうした問題は従業員の業績、さらには会社の利益にも多大な影響を及ぼす可能性がある。

米企業団体ナショナル・ビジネス・グループ・オン・ヘルス(NBGH)によると、精神疾患や薬物乱用の問題による企業の医療費負担は年間およそ790~1050億ドル(約9兆~12兆円)と推定される。生産性の低下、正当な理由のない常習的な欠勤の増加、企業の医療費負担の増加は、精神疾患が企業に与える経済的負担の例のごく一部だ。

働く人のおよそ5人に1人が精神疾患の診断を受ける米国では、企業にとって重要なのは必要な対策を講じることだ。従業員の精神的健康を促進することは、組織全体を向上させるための最善の方法の一つといえるだろう。

従業員の精神的健康の維持が可能な職場にするため、企業が取り得る対応のいくつかを紹介する。

1. ワークライフバランスの推進

長時間労働を称賛することは、長期的に見ればさまざまな面で企業に悪影響をもたらす。健全なワークライフバランスを目指すことが重要だ。

企業は従業員に休暇の取得を奨励すること。そして、従業員がいつでもすぐにメールに返信してくれると思わないこと。従業員が満ち足りた私生活を送ることが重要だと考えていることを、明確に示すことが必要だ。

2. 精神的健康に関する意識の啓発

精神的な健康について、従業員と話す機会を持つこと。リスク要因や治療の必要性などを把握することにつながる無料の検査を実施するのも一案だ。

また、部下の精神的な健康状態に問題が生じている兆候を確実に見極めることができるよう、管理職に対する研修を行うこと。上司が思いやりを持って従業員と話し合うことは、従業員が(受診するなど)助けを求めようとすることを後押しするのに役立つだろう。

3. 従業員支援プログラムの周知

多くの企業が従業員支援プログラム(EAP)を導入しているにもかかわらず、その内容についてはほとんどの人が理解していない。従業員に対してはプログラムが利用可能であることや、その効果についてよく説明しておくこと。

夫婦間の問題でも不眠症でも、EAPは従業員の業績に悪影響を及ぼし得る問題への対応を支援することができる。企業側は従業員に対し、プログラムの利用が無料であり、秘密が確実に守られることを確約する必要がある。
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編集=木内涼子

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