米内国歳入庁(IRS)は2003年、フォーブスの長者番付「フォーブス400」に触発され、毎年の調整後総所得(AGI)上位400人の納税申告内容をまとめた報告書の公表を始めた。(残念ながら、この年次報告書は昨年12月に終了が発表されている)
この報告書からは、トランプの納税額が超富裕層の平均よりも高いものの、その唯一の原因が「代替ミニマム税(AMT)」と呼ばれる税制の存在だったことが分かる。トランプは昨年の大統領選でAMT撤廃を掲げていたが、この制度がなければ彼の納税額は異常なまでに低い水準になっていただろう。
2005年のIRS報告書に掲載された富豪の平均実効税率は18.23%だった。だが400人の平均納税額3900万ドルに占めるAMTの額がわずか140万ドルだったのに対し、トランプは納税額3660万ドルの大半に当たる3130万ドルがAMTだった。もしAMTが撤廃されていれば、トランプの納税額は530万ドルに激減し、実効税率はわずか3.5%となる。
同年の平均実効税率は、1万ドル未満を除くすべての年収グループで4%を超えていた。平均税率は、AGIが5万~10万ドルの中間層で9%、10万~20万ドルで13%、20万~50万ドルで20%、50万~100万ドルでは全体で最も高い24%だった。
では富豪400人はなぜ、トランプのように多額のAMTを課されず、平均税率が20%を下回ったのだろうか? その理由は、400人のAGI総額の約6割が、最高税率15%の実現資本利得や配当金による収入だったことにある。一方のトランプの収入は大半が最高税率35%の通常所得(賃金や企業所得、利息、賃貸料所得など)だった。(いずれの最高税率も現在は引き上げられている)
IRSの報告書では富豪400人の氏名は公表されていないが、トランプは含まれていなかったもようだ。2005年の上位400人に入るには少なくとも1億ドルのAGIが必要だったが、トランプは1億5300万ドルの収入を1億300万ドルの損失で相殺した上で、約94万ドルの給与所得控除も適用し、AGIを4860万ドルに抑えていた。