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2017.03.17

「建築×不動産×テクノロジー」で実現する理想の住まい

左:上村康太、中央:村上浩輝、右:中村真広 (photograph by Toru Hiraiwa)

ツクルバは、村上浩輝と中村真広が2011年8月に共同創業したスタートアップ。会員制シェアードワークプレイス「co-ba」をはじめ、リノベーション住宅の物件情報をユーザーへ直接届けるオンラインマーケット「cowcamo」等を運営する。上村康太がシニア・アソシエイトを務めるグロービス・キャピタル・パートナーズは、16年1月に同社への投資を実施した。


上村:出会いは、12年初頭。当時の私は「ソーシャルランチ」というサービスを運営する起業家で、二人は日本のコワーキングスペースの火付け役として、co-baを運営していました。起業した時期と年齢が近いこともあり、互いの展望や起業家ならではの悩みを共有するなど、起業家仲間として交流していました。

村上:後に企業売却を経てベンチャーキャピタリストに転身した上村さんに、cowcamoの成長に向けて資金調達の相談をしたのは15年夏です。

中村:かつては起業家としてco-ba主催のピッチに参加していた上村さんに、今度はピッチ資料を見てもらうことになったわけです(笑)。

上村:友人であることは、もちろん投資プロセスには無関係です。投資した理由は、まず第一に狙う中古住宅流通・リフォーム市場が、政府が20年までに規模倍増(20兆円)を掲げる成長市場だったこと。

そして「偏在する中古住宅からの物件の選定」「ユーザーの集客」「最適な物件の提案」「販売」という長く複雑なプロセスは、不動産の知識だけでも、ウェブサービスのノウハウだけでも成立せず、建築・不動産・テクノロジーという三分野に強みを持つツクルバが、この市場の変革を担える唯一の企業だという確信から、投資を決断しました。

村上:上村さんは、起業家出身なので僕らの立場に理解があり、様々な悩みを同じ目線で理解してくれる、何でもさらけ出せる存在。資金調達前の3カ月間に及ぶ事業プランのディスカッションを経て、信頼感がより高まり、現在も“ファンドから来たお目付け役”ではなく、“同じ船に乗っている仲間”だと思っています。

中村:建築出身の私は、ビジネスよりもデザイン・クリエイティブ視点で経営に関わっています。上村さんに投資をお願いしたのは、ツクルバのビジネスモデルに加えて、コミュニティの良さや事業の文化的な側面に価値を見出してくれたからです。

上村:ツクルバの特徴は、社員が次々と自分の仲間を新しい社員として連れてくるところ。この一年で社員数も3倍になっています。元起業家として人を集める難しさを知っているので、この“ツクルバ・エコシステム”は投資の大きな決め手でした。

中村:cowcamoが実現したいのは、不動産エージェントへのテクノロジー導入により、住まい手のニーズを作り手へ“翻訳”すること。現在、理想の住宅イメージを持ち、DIYやセルフビルドで実現できている人はごく少数で、大多数の人はおぼろげな理想像があっても、デベロッパーが作った住宅以外に、現実的な選択肢がありません。「こんな家をユーザーが欲しがっているから、作ってみよう」と、不動産業界の上流・下流が反転し、生活者の欲しがる住環境が整う未来を目指します。

村上:ツクルバにとってのcowcamoは、グーグルにとっての検索エンジン-この事業を強力な“収益の柱”に育て上げ、長期にわたって社会へ価値を生み出し続ける企業へと成長していきます。


上村康太(うえむら・こうた)◎グロービス・キャピタル・パートナーズシニア・アソシエイト。京都大学経済学部卒。Google Japanを経て、シンクランチを創業。代表取締役副社長を務めた後、同社の売却先であるDonutsへの参画を経て、2015年2月より現職。主な投資先は、akippa、ファスト メディア、大都。

村上浩輝(むらかみ・ひろき)◎ツクルバ代表取締役CEO。立教大学社会学部卒。コスモスイニシア、ネクストを経て、2011年8月にツクルバを共同創業し、現職。

中村真広(なかむら・まさひろ)◎ツクルバ代表取締役CCO。東京工業大学大学院建築学専攻修了。コスモスイニシア、ア・プリオリを経て、11年8月にツクルバを共同創業し、現職。

文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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