スキャンダル漬けの製薬大手を「治療」したCEOの静かなる退出

アンドリュー・ウィティー 製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)最高経営責任者

今年の3月に製薬大手GSKを退任するアンドリュー・ウィティーCEOは、こんなふうに人々の記憶に残りたい、と考えている。

マラリアやエボラウイルスに対するワクチンの開発に取り組み、経営を安定させ、医薬品の販売促進を目的とした医師への支払いを止めさせた倫理的なCEOー。

だが彼がCEOに就任した2008年以降、GSKは株価で競合の後塵を拝し、14年には中国で政府高官や医師への贈賄罪に問われている。

製薬会社の経営者にとって難しいのは、前任者たちが下した決断の結果で評価される、という点だ。ウィティー在任中のスキャンダルも、多くが業界の慣例や過去のCEOの失策による。もっとも、マラリアワクチンは同社が30年かけて取り組んできた結果なので、功績に関しても同じことがいえる。ウィティーもその点については理解している。

「製品寿命が20年の業界で、1年先のことしか考えないのは自殺行為です。その時間軸に沿った戦略を立てる必要があります。少なくとも私たちはそう努めてきました」


アンドリュー・ウィティー◎23年間グラクソ社でマーケターとして勤めた後、08年5月にGSKのCEOに就任。同社のアフリカ地域のビジネスに長く携わっていた経験から、在任中はマラリアやエボラウイルス対策に積極的に取り組んできた。後任のCEOには、同社のコンシューマー・ヘルスケア事業を率いるエマ・ウォルムズリーCEOが就くことが決まっている。

文=フォーブス ジャパン編集部、写真=レヴォン・ビス

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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