ビジネス

2017.03.13

ITスタートアップの組織的「稚拙さ」 ウーバーの危機で露呈

ウーバーのトラビス・カラニックCEO(Photo by Michel Porro / gettyimages)


組織成熟度は子ども並みのウーバー

ウーバーは、時価総額がスタートアップ企業としては世界1位の680億ドル(約7兆8000億円)に上る巨大企業だが、経営の成熟度で言えば、ガレージにオフィスを構えるスタートアップと同じままだ。

だがこのパラドックスは新しいものではない。マイクロソフト、グーグル、フェイスブック、そしてあのアップルでさえも、比較的原始的なマネジメント体制を維持したまま世界的地位を得るに至っていた。

この一因には、インターネット経済のおかげで複雑な調整機能の導入をぎりぎりまで先延ばしできたことがある。2016年、フィアット・クライスラー・オートモービルズが従業員数約23万人で年間収益1180億ドル(約13兆5500億円)を達成したのに対し、グーグルは4万7000人で900億ドル(約10兆3400億円)を稼ぎ出した。従業員が少なければ少ないほどコミュニケーションは減り、調整も楽になるのだ。

たとえ8歳にしてカーネギーホールでラフマニノフを披露するような神童がいたとしても、その子の大好物は他の子と同じイチゴパフェだろう。厳しい人生経験を積み重ねて成長しない限り、子どもには大人の振る舞いはできない。

才能あふれるカラニックCEOだが、ウーバーに成功をもたらしたそのワンマン的な行動が今、同社の成長を阻んでいる。今起きている騒動は、ウーバーの成長物語の一節なのだ。

カラニックは新たに採用予定の幹部を「新たな章を私と共に書くことができる人」と形容しているが、COOはそんなに軽い存在ではない。実のところウーバーは今、グレイナーの企業成長モデルの第1章を終えつつあり、「リーダーシップの危機」に直面している。

同社は、従業員の増加に伴い管理体制を強化し、不祥事防止のため内部監査制度を整備しなければいけない。新入社員はもはやCEOと気軽に接触できなくなり、結果として第1世代の従業員が持っていたような忠誠心もなくなるだろう。

ウーバーは今後常に、ある教訓を私たちに思い起こさせてくれるだろう。それは、過去の成功体験は別の目標には通用しない、ということだ。

編集・翻訳=遠藤宗生

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